文化認識論

(世界を記述する。Since Oct. 2019)

右翼と左翼とトリックスター

経済学者の松尾匡氏が、その著書(文献1)の中で、次のように述べておられました。

 

- 世の中を「タテ」方向に切って、「ウチ」と「ソト」に分け、「ウチ」に味方するのが「右翼」で、世の中を「ヨコ」方向に切って「上」と「下」に分け、「下」に味方するのが「左翼」だということです。(中略)世の中の「ウヨサヨ論議」がたいてい噛み合わないのは、これが原因だと思われます。-

 

私は、こういう話に出会うと、感心してしまいます。幸いこの話、松尾氏自身が図解入りで公開しています。是非、ご覧ください。(最初は分かりやすいのですが、ホリエモンが出て来る当たりから、段々、難しくなって来る。余談ですが、松尾氏の経済論もかなり難しい。)

 

松尾匡 用語解説 右翼と左翼
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/yougo_uyosayo.html

 

このブログのタイトルにもありますように、私の主たる関心の対象は、文化論と認識論ですが、この右翼と左翼の話は、認識論の範疇にあり、興味が湧いて来るのです。少し考えてみたいと思います。

 

まず右翼。彼らの認識ステップを考えてみましょう。

 

Step 1: 彼らはまず、国籍、民族、性別などの区分によって、自分のアイデンティティを認識する。
Step 2: 自分のアイデンティティと他者(ソト)のアイデンティティを比較する。
Step 3: 比較検討の結果、自分と他者との関係を判断する。すなわち、敵か味方か、どちらが強いか、序列はどちらが上か、自分にとっての損得はどうか。
Step 4: 敵に対しては攻撃的な態度を取り、味方には共感する。他者の序列が自分より上であればへりくだり、そうでなければ侮蔑する。自分にとって利益になるように行動する。

 

このように考えますと、これらの認識ステップは、本物の右翼(三島由紀夫一水会の方々など)のそれではなく、いわゆる似非右翼、対米従属右翼、ヘイトスピーチを行う団体やそのメンバー、ネトウヨなどの特質を表わしているように思います。(本物の右翼のメンタリティというのは、武士道から来ていると思いますが、この点は、本稿では触れないことにします。)

 

例えば、対米従属右翼というのは、日本よりもアメリカの方が強いと思っている。だから、従属するのは仕方がないという発想になる。彼らの思想的なポジションからすれば、憲法9条の問題にしたって、戦力不保持、交戦権の放棄などは容認できないはずですが、自衛隊を9条の2として記載するという現在の自民党の妥協的な改憲案に賛成したりする訳です。

 

ヘイトスピーチを行う団体は、本来、戦うべき相手はアメリカだと思いますが、アメリカは日本より強いので、文句を言わない。反対に韓国は日本よりも下だと思っているので、嫌韓を主張する。

 

そこそこ株式投資をしている70代の人たちは、消費税によって自分たちの年金が支えられていると思わされ、安倍政権や消費税の増税に賛成したりする。

 

このような認識方法というものを改めて考えてみますと、とてもシンプルだと思います。犬の喧嘩だって、弱い方が尻尾を巻いて逃げる。ほとんど、動物の本能と変わりがないように思いますが、これが現在の日本のマジョリティではないでしょうか。グローバリストも同じだと思います。今だけ、金だけ、自分だけ、というメンタリティなのです。

 

そして、この認識パターンの特徴は、あくまでも「自分」を出発点として、他者や外界を認識している。ということは、例えば日米FTAの問題など、「あなた自身に関わることですよ、あなたにとって大変な不利益になりますよ」ということを教えられれば、きっと彼らも反対に回ると思います。(ちなみに、ここに記した認識方法は、本ブログにおいて「記号分解」として記述されてきたものです。)

 

では、左翼の認識パターンについて考えてみましょう。世界を横に切って、下にシンパシーを感じるのが左翼です。

 

例えば、話題の「桜を見る会」の問題ですが、招待状に振られた60番という番号は、これは安倍夫妻が推薦したことを表わしている。そして、60番の招待状がマルチ商法ジャパンライフの社長に届けられた。安部総理から招待状を受けるような人であれば、きっと信用できるに違いないと思ったある“おばあさん”が、ジャパンライフに騙されて、老後のために貯蓄した財産の大半を失ってしまった。聞けばこのおばあさん、15の時から働き詰めだったそうです。きっと、中学卒業と同時に働き始めたに違いない。畑仕事をやっていたのだろうか? 冬の寒い時期には、きっと両手に“あかぎれ”を作っていただろう。そんなことを考えていますと、沸々と怒りが込み上げて来ます。

 

安倍晋三、ふざけるな! 国会の予算委員会に出て来て説明しろ! 官僚よ、嘘をつくな! シンクライアントであれば、安倍の招待者リストは、復元できるに決まってるだろ!」

 

このように思って私の血圧は上がるのですが、これが左翼の認識パターンではないでしょうか。右翼の場合はあくまでも「自分」から出発して認識する訳ですが、左翼の場合はそうではない。あくまでも時間の経過に沿った物語を想像し、物事を認識する。認識の出発点は、「自分」ではなく、認識しようとする対象(上の話では“おばあさん”)ということになります。(このような左翼の認識パターンは、このブログで「物語的思考」と呼んできたものです。)

 

何故か私の場合、想像力というものに歯止めがありません。人間を離れ、例えばクジラにまで想像力が及ぶ訳です。クジラはあの巨大な体を使って、低重波を発する。その到達距離は6千キロにも達し、これは太平洋の東から西にまで届くような距離だ。これは凄い。最大のシロナガスクジラの全長は、35メートルにも及ぶ。これはとても貴重な生き物だ。クジラを食べるなどけしからん。そう思うので、私は捕鯨に反対なのです。この問題をネトウヨの人に持ち掛けたら、どうなるでしょうか。多分、彼はこう言うでしょう。

 

「その話、俺には関係ないよ」

 

やはり、松尾匡氏が指摘したように、右翼と左翼というのは話が噛み合わない。噛み合わないので、話が前に進まないのです。

 

私たちが生きている現実の世界も、実は、神話や小説に描かれる“物語”と似ているのではないか。嫌、正確に言えば、現実の世界を神話や小説が写し取っている。そして多くの場合、物語には起承転結がある。

 

現在の日本の政治状況を考えてみますと、まず、安倍晋三という空っぽの世襲議員が総理大臣になった。これが、「起」です。何しろ、空っぽなので、次々に問題が発生します。戦争法の制定、種子法廃止、水道の民営化、モリ・カケ・サクラに日米FTA。これらが「承」ですが、一向に「転」がやって来ない。いわば、起承転結ではなく、「起承承承」なのです。これではやり切れない。

 

ただ、現在の日本のように閉塞した時代というのは、過去にもあった。そして、そのような状況を打破し、物語を前に進めて来た人がいるのです。ゲーム・チェンジャーと言っても良いと思いますが、ここではトリックスターをご紹介したいと思います。

 

誠に恐縮ですが、ここで話が心理学に飛びます。

 

分析心理学のユングは、世界中の神話を研究するうちに、人類に共通するいくつかのイメージが存在すると考えた。このイメージは、神話のみならず人々の夢に出てきたり、深層心理に刻まれていたりすることをユングは発見する。そしてユングは、これらの人格に関するイメージを「元型」と呼んだのです。

 

元型にはいくつかのタイプがあり、グレート・マザーとか老賢人が有名ですが、その中に「トリックスター」というものがある。これは、異なるものを結合したり新たな意味づけをもたらしたりする道化的な人格を意味しています。色々な物事から自由でありながら、それらを揺るがし、異なるコンテクストを繋げる。そういう人格なのです。(参考:放送大学 人格心理学講座 大山泰宏氏)

 

例えば、中世のヨーロッパには王様がいて、王様はお城に住んでいた。王様に呼ばれて、道化師はお城の中へ入る。そこで、芸を披露して王様を楽しませる。またある時は、ストリートで大道芸を披露し、庶民を楽しませる。王様に対する皮肉を言って、観衆を笑わせたりする。そういう人格のイメージが、トリックスターだと言える。

 

そして、何故、そのようなイメージを人々が深層心理に持っているかと言えば、現実にそういう人間がいて、閉塞した社会状況を変えて来たからではないか、と思うのです。対立関係にある双方に働き掛け、既存のルールを揺るがし、物語を前進させる。すなわち、物語に「転」をもたらす。それがトリックスターであって、それは人々が心の奥深い所で待ち望んでいる希望なのではないか。

 

実は誰もが知っている「水戸黄門」もトリックスターの表象だと言える。大体、悪代官と越後屋が、「お主も悪よのう」などと言いながら悪事を企んでいる。そして、町娘が危機に陥ったりする訳です。そこで、水戸黄門が登場し、助さんが「この印籠が目に入らぬか!」と言って、物語は「転」を迎える。それまでのルールや秩序は一層され、ハッピーエンドを迎える訳ですが、仮に、水戸黄門がお城の中に籠っていた場合、物語は成立しません。お城の城壁を超える所に水戸黄門トリックスターたるゆえんがあると思います。

 

このようにトリックスターというのは、空間的な、社会的な、あらゆる境界を超えるのです。そして、物語に転機をもたらす。それは私たちの希望であり、社会を変革させる原動力でもある。右翼的なパターンで認識している人も、左翼的な方法で認識している人も、心の奥底には、トリックスターという共通するイメージを持っている。私はこの原稿で、そのことを記したかったのです。

 

<参考文献>
文献1:これからのマルクス経済学入門/松尾匡 橋本貴彦/筑摩選書/2016

 

日米FTAは、日本支配の最終段階

ちょっと、ここまでの話を整理してみましょう。

 

グローバリズムというのは、次の権力構造にある。

 

国際金融資本 - アメリカ政府 - 自民党(清和会)・官僚組織

 

アメリカ政府が何故、日本政府に対して強く出られるかと言うと、次の項目を挙げることができます。

 

日米安全保障条約
日米地位協定(駐日米軍基地の容認)
・日米合同委員会
年次改革要望書

 

このように考えますと、国際金融資本とアメリカ政府が一緒になって日本を攻めている訳ですが、その背景に「軍事力」があることになります。

 

加えて、企業の資本関係を背景として、国際金融資本が日本の経団連に影響力を及ぼし、経団連はその広告・宣伝費を使って、日本のマスメディアを支配している。

 

国際金融資本 - 経団連 - 日本のマスメディア

 

この系統によって、日本国民が知り得る「情報」が制御されている。すなわち日本は、軍事力と、資本と、情報の3つによって支配され、この勢力に従っているのが、自民党を始めとする政党であり、官僚組織であり、マスメディアだということになります。このような支配勢力に従属しようという考え方が、グローバリズムだということです。

 

そして日米FTAは、グローバリズムによる日本支配の最終段階ではないでしょうか。

 

このブログでは、日米FTAを切り口として何回か原稿をアップしてきましが、その基本は、次の3つの対立軸を設定して、日本の政治勢力を分類するということです。

 

1. グローバリズム vs 主権国家主義
2. 緊縮財政 vs 積極財政
3. 右派 vs 左派

 

ここまでの検討結果を一覧にしてみましょう。

 

グローバリズム - 緊縮財政 - 右派
 → 自民、公明、維新 / 経団連

 

グローバリズム - 緊縮財政 - 左派
 → 立憲、国民 / 連合

 

グローバリズムで積極財政という勢力は、存在しないと思います。)

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 右派
 → 石破茂氏(自民党 石破派)

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 左派
 → 共産、社民

 

今回は、残る「主権国家主義 - 積極財政」の勢力について、検討してみましょう。

 

主権国家主義 - 積極財政 - 右派

この勢力が結集していると思われる政治運動として「令和ピボット運動」があります。

 

令和の政策ピボット
https://reiwapivot.jp/

 

発起人である三橋貴明氏は、かつてテレビ番組において悪名高い竹中平蔵と対決し、論破しています。その意味では筋金入りだと言えますが、最近は、悪いのは財務省であって安倍総理ではない、という論調もあり、この点、私としては賛成しかねます。

 

次に、藤井聡氏がおり、同氏は雑誌「表現者クライテリオン」の編集長もされています。この雑誌は、最近、「安倍総理“器”論」という特集を組み、安倍総理が空っぽであるという主張を展開しています。また藤井氏は、最近、“れいわ新選組”の山本太郎さんを擁護する発言をしています。

 

ジャーナリストの堤未果氏は、先にこのブログで紹介しました関西方面のTV番組で日米FTAの解説をされていた方です。

 

余談になりますが、「令和ピボット運動」の賛同人の中には、YouTubeにおける右翼番組として有名な「チャンネル桜」の水島氏もおられます。同氏は筋金入りの右翼だと思われ、かつて山本太郎さんが天皇陛下に手紙を渡すという事件があった時、街頭に出て、太郎さんを糾弾する抗議活動をしていました。そんな経緯もあって、水島氏は太郎さんを敵視しているのです。しかし、チャンネル桜で「安倍総理“器”論」を取り上げた際には、出席者の過半数から山本太郎さんを擁護する発言があり、むしろ水島氏が浮いているような印象がありました。

 

自民党の安藤裕国会議員も、このグループだと思います。安藤氏は自民党の内部から「積極財政」への転換を模索していく意向だそうです。しかし、現在の自民党は安倍一強と言われており、私は無理だと思います。

 

この「積極財政-右派」のグループには、強力なメンバーが揃っているように思います。しかし、このグループの主張を体現する国政政党は、存在しません。また、担ぎ上げるべきリーダーがいない。これが最大の弱点だと言えます。

 

では、最後のグループについて述べましょう

 

主権国家主義 - 積極財政 - 左派

経済学者の松尾匡氏が中心となって展開している「薔薇マークキャンペーン」という運動があります。

 

薔薇マークキャンペーン
https://rosemark.jp/

 

これは特定の政党は支持せず、積極財政政策に賛同する政治家、候補者に薔薇マークを認定するという活動です。認定を受けた政治家を見ますと、結構、共産党系が多い。但し、共産党系の議員は、積極財政の論理的な基盤をなすMMTに賛同しているという訳ではなく、法人税所得税増税すれば、財源は確保できるだろうと考えているようです。

 

山本太郎さんと彼の率いる“れいわ新選組”も、このポジションにいます。国会議員の馬淵澄夫氏(無所属)も同じです。馬淵氏は、交通事故に合われましたが、最近、退院されたようです。

 

最近、積極財政派に転向している小沢一郎氏も、このポジションになります。同氏が仕掛けている「年内の立憲と国民の合併」は、進展が見られません。どうやら、これは無理なのではないかと思われます。連合が反対しているという情報もあったように記憶しています。両党の年内合併が実現しなかった場合、小沢氏の発言力が低下するのは避けられません。この場合、小沢氏はどうするのか。引退するのか、あるいは何かウルトラCを考えているのでしょうか?

 

日米FTAは終わる。私たちが望めば

この原稿のタイトルって、ジョン・レノンの“War is over, if you want it”のパクリではないかと思った人、その通りです。

 

FTA is over, if we want it!

 

しかし、これは単なる私の個人的な願望ではありません。日米貿易協定の原文、第10条にそう書いてあるのです。同条文によれば、いつでも、いずれかの締約国が相手国に書面により通知をした場合、その4ヵ月後に協定は終了する。そう書いてある。

 

・2019年10月7日 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(“日米貿易協定”)
 署名者: 杉山駐米大使 ライト・ハイザー通商代表
 目 的: 日米間における物品貿易の促進。市場アクセスの改善。
 品 目: 牛肉、豚肉、ヨーグルト、チーズ、オレンジなど。(日本が譲歩)
 効 力: 両国において、国内法上の手続を完了した後に効力発生。(9条)
 終 了: 書面による通知後、4ヵ月。(第10条)

 

嘘だと思う人は、是非、外務省のHPを確認していただきたい。

 

外務省 HP
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page23_002886_00001.html

 

本件は、今後、参議院で審議されることになりますが、野党はどうせ戦わない。若しくは、戦っているフリをするだけだろうと思います。ましてや、憲法に基づき、衆議院で可決した結果を参議院でひっくり返すことはできません。衆議院以上に、ヤル気のない審議が続くのだろうと予測します。しかし、私たちに希望は残されている。それは、アメリカと対等に交渉のできる強い政府を作ることです。そして、第一段階を含め、日米FTAを終わらせればいいのです。法的には、いつでも通告をすることによって、4ヵ月後に終わらせることができるのですから!

 

ところで、先の原稿でグローバリズム勢力の分析を行いましたが、では、反グローバリズムとは何か、考えてみる必要があります。世間では、反グローバリズムという言葉が一般に用いられており、私もその例にならってきました。しかし、この言葉は“グローバリズムには反対だ”という意味がありますが、では、何がいいと思っているのか、そのことを示してはいません。

 

私は、反グローバリズムとは、国家を枠組みとして考える、ということだと思います。これを何と言うか。単純に“国家主義”と呼びたいところですが、コトバンクWikipediaを見ますと、“国家主義”にはロクな意味が載っていない。個人の利益よりも国の利益を優先するのが国家主義だ、と書いてある。これでは、私の考えていることとは正反対です。そこで、私の造語で学術用語ではありませんが、「主権国家主義」ということにしたいと思います。

 

主権国家主義」という言葉に込める私の思いは、独立した国家として、他国や他国の政治、経済勢力に支配されることなく主権を行使し、三権分立や民主主義に従って、国家を運営すべきだ、という主張ということです。これが、反グローバリズムの本質だと思います。

 

ところで国家とは何か。これはもう昔から沢山の人々が考え続けて来た大変な問題ですが、ここではざっくりとその概要を見て行きましょう。思うに、国家に関する代表的な考え方には、次のものがあります。

 

1. 君主制
2. 軍国主義
3. 共産主義
4. 立憲主義
5. 民主主義
6. MMT

 

君主制・・・王様やお殿様が国を統治する。日本の明治憲法では、天皇陛下が国を治めていたので、このパターンだったと言えます。

 

軍国主義・・・軍事力によって、国を治めようという考え方。現在の北朝鮮などは、これですね。また、敗戦までの日本も同じでした。戦争ばかりやっていた“50年戦争”と呼ばれる時期があった訳です。国家と言うと、このイメージが強い。国家というのは、悪いものだ。従って、国家は弱い方がいいと考える人は少なくありません。かつて、私もそう思っていました。

 

共産主義・・・土地の私有財産制を認めない。土地は国家が所有する。その他、私有財産制に制限を設ける。国家が私人の財産制度に介入するという意味で、共産主義主権国家主義の一種類だと言えます。かつて共産主義者の中には、世界革命を主張する人がいました。全世界を共産主義にしようという主張です。これは究極のグローバリズムだと言えますが、今どき、そんなことを考えている共産主義者は少ないと思います。

 

立憲主義・・・立憲主義のポイントは、3つあります。第1に、憲法によって国を作ろうということ。第2に、人権を守ろうということ。第3に、人権を守るために、権力は分立させようということ。これが三権分立につながります。このように、立憲主義というのは、主権国家主義の中核をなす考え方なのです。従って、党名に“立憲”の2文字を掲げながら、自由主義貿易体制(グローバリズム)を推進しようという立憲民主党は、「看板に偽り有り!」だと思う訳です。

 

民主主義・・・主権在民国民主権。これが民主主義で、これは君主制と真っ向から対立します。立憲主義の場合は、明治時代の日本など立憲君主制の国家があり、必ずしも君主制と対立しない。ところが、民主主義は君主制と対立する。従って、立憲主義と民主主義は、イコールではない訳です。例えるならば、国のシステムを規定する立憲主義がコップで、民主主義はコップに支えられた水、すなわち内実だと言えます。どちらか一方が欠けても、主権国家主義の目的を果たすことができません。だから、本当は立憲民主党という党名は、大変素晴らしいのです。かえすがえすも、残念でなりません。また、現在の日本のように、権力側が教育とメディアを握ってしまうと、必然的に国民は愚民化する。愚民は、権力に盲従する。よって、現在の日本においては、民主主義が危機的な状況にある。民主主義は既に終わった、と言う人も出てきた。しかし、それでも民主主義しかない。今般、中国政府によって弾圧を受けて来た香港で、自由を求める人々が選挙で圧勝した。正に、民主主義の勝利だと思います。

 

MMT(現代貨幣理論)・・・自国通貨を発行できる政府が、いくら負債を増やしたとしても、破綻することはない。従って政府は、インフレ率に応じて、供給サイドの企業、需要サイドの消費者が保有する通貨の量(マネーストック)を調整することができる。MMTについては私も勉強中で、偉そうなことは言えませんが、概ね、こういうことだと思います。MMTは現象に関する理論であって、主義、主張ではない、とも言われますが、そこから導かれる経済政策は、国家を単位として考えている訳です。従って、これは国家をベースとした理論であって、グローバリズムと対立する訳です。MMTというのは、国家による統制経済を目指しており、実はこれ、共産党と相性がいい。MMTによって、近年、急激な経済成長を遂げたのは中国だ、とも言われています。日本共産党の方々には、是非、MMTを勉強していただきたいと思う次第です。

 

では、グローバリズムに反対し、主権国家主義を目指す政党、政治勢力について見ていきましょう。

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 右派

 

上記のような勢力としては、自民党石破茂氏と同氏が率いる派閥、水月会を挙げることができます。石破氏は自らのブログに「あらゆる体制を整備し、真の独立主権国家へ」と記載しており、明らかに反グローバリズムの側に立っています。自民党の中にもかつては経世会と呼ばれる対米自立派のグループが存在したのですが、今、自民党の中で対米自立を主張するのは、ほとんど石破派位しか残っていないのでは。石破派は、安倍総理から干されている訳ですが、最近の世論調査では、次期総理にしたい人ランキングで石破氏が1位になりました。

 

石破氏は、自民党の中で憲法について語ることのできる、数少ない人材でもあり、論理的な思考のできる人だと思います。安倍総理やセクシー進次郎とは、訳が違います。但し、経済政策については、消費税増税を主張してきた経緯があり、そんなことで国民生活が豊かになるはずがありません。

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 左派

 

このパターンは、「緊縮左派」と言っても良い勢力だと思います。代表例は、かつての社会党、現在の共産党だと思います。特に共産党は、一貫して対米自立を主張してきた数少ない日本の政党だと思います。日本は、敗戦という悲惨な経験をした。そこで、やはり平和がいい、憲法9条を守って行こうという気運が高まった。そこで、護憲派と呼ばれる勢力が台頭する。しかし護憲派は、憲法9条のみならず、それとセットになっている財政法のトリックを見破ることができなかった。すなわち、日本は自律的に国債を発行して、国民経済におけるマネーストックの量を調節するという自由を奪われていたことに、彼らは気付かなかった。もしかすると、未だに気づいていないのかも知れません。それでも、戦後、朝鮮戦争による特需、それに続く高度成長期、バブルと日本ではインフレが続きました。これらの段階で、問題は生じなかったのです。問題は、今から20年ちょっと前にデフレが始まった訳で、以後、大量に国債を発行する必要が生じた訳です。それでも、緊縮左派の勢力は、与党と一緒になって、緊縮財政を進めて来たのです。この罪は重い。

 

緊縮左派の新聞としては、朝日、毎日などがあります。彼らは、未だに子や孫の代まで借金を残してはいけない、という寝ぼけたことを書いています。ちなみに、朝日、毎日の幹部は、読売、サンケイなどと同様、最近、安倍総理と夕食を共にしており、ヒンシュクを買っています。

 

緊縮左派というのは、一見、正しそうに見える。かつて、日本の多くの知識人がこの立場に立っていたのではないかと思います。現在も経済学者の金子勝氏、元経産省官僚の古賀茂明氏、市民連合を立ち上げた政治学者の山口二郎氏などが、この立場を取っていると思われます。

 

蛇足かも知れませんが、現在の共産党のポジションについて、ちょっと述べておきましょう。昨今、新聞赤旗の購読者数は減少傾向にあります。党員数も減っています。しかし、共産党にとって最大の課題は、党員の高齢化ではないでしょうか。あと、10年もすると党員が激減する可能性がある。そのような状況下にあって、小沢一郎氏が立憲と国民の合併を仕掛けている。もし、合併によって一大勢力が誕生する場合、共産党としてもその波に乗り遅れてはならない。そこで、共産党は他の野党に対し「野党連合政権協議」を持ち掛けた。簡単に言うと、政権交代が起きた場合、共産党からも大臣を出したい、という意味です。当然、立憲や国民は難色を示している。何しろ彼らは、支持母体である連合から「共産党とだけは、絶対に組まないでくれ」と言われているのです。そして、共産党からの呼び掛けに最初に応じたのが、“れいわ新選組”だった。両党は、「当面、消費税5%への減税を行い、その後、消費税廃止を目指す」ということで、概ね、合意したのです。(共産党としては、消費税における非課税品目を増やすなど、別の方策も検討したいと言っていました。)これらの事項から考えられるのは、共産党としては、2つの方向を目指しているということです。第1には、「野党連合政権協議」を結実させ、政権交代が起きた場合には政権の中に入る。第2には、この選択肢が消滅した場合には、勢いのある“れいわ新選組”と共闘する。

 

共産党は、日米FTAについては、そのHPで明確に批判しています。確か、新聞赤旗においても、反対の意見表明があったように思います。しかし、国会での動きなどを見ておりますと、今一つ、力が入っていない。むしろ、他の野党と一緒にサクラ問題の追及に力を入れている。これは上記のように、現在、共産党が両にらみの状況にあるからではないか。(これは、私の推測です。)

 

今回も、書き切れませんでした。このシリーズ、もう一本、原稿をアップします。

日米FTA 野党は何故、戦わないのか

日米FTAのリスクを端的に表現する標語を作ってはどうか。そう思って、考えました。

 

FTA 病気になったら ホームレス

 

実際、アメリカには55万人のホームレスがいるそうです。例えば、1千万円程度の年収がある人でも、大病を患うとホームレスに転落してしまう。民間の保険には入っている。でも、それで十分な医療費を賄うことができず、自己破産し、ホームレスになる。日本をそんな国にしていい訳がありません。日米FTAダメ、絶対!

 

日本において、経団連は強い権力を持っています。経団連は、大企業の集まりですが、大企業には無数の下請け企業がついている。そして、従業員の家族まで含めると、相当な数に及ぶ。そこで経団連は、自民党に対し、巨額の政治献金を行い、組織ぐるみ選挙で応援する。だから、自民党経団連に頭が上がらない。

 

アメリカも、基本的には同じ構図にあるのではないか。例えば、経団連の100倍、いや千倍位の規模を持った多国籍企業が存在する。しかし、多国籍企業には株主が存在する。企業経営者よりも株主の方が強い。彼らを「国際金融資本」と呼びましょう。国際金融資本は多額の献金を行い、アメリカの政治を支配する。そして、アメリカが日本を支配する。こういう関係なんですね。

 

国際金融資本 - 米国政府 - 自民党(日本政府)

 

経済の面で考えますと、国際金融資本は、日本の大企業の株主にもなっているので、経団連はこれに逆らえない。経団連は多額の広告・宣伝費を使うので、メディアはこれに逆らえない。

 

国際金融資本 - 経団連 - 日本のメディア

 

現在日本で進行しているグローバリズムの構造は、このようになっていて、日米FTAもこの流れで進行している。

 

先の原稿で、グローバリズム反グローバリズムという構図を書きましたが、現実の政治を見ますと、もう少し詳しく対立軸を見ていく必要がありそうです。2番目に大きな対立軸は、緊縮財政 対 積極財政 ではないか。アメリカはとにかく、日本を貧困化させたいと考えているので、グローバリズム、対米従属の立場からすると、必然的に緊縮財政を選ぶことになる。更に、小さな対立軸ではありますが、3番目として、伝統的な右派、左派という概念を入れてみましょう。現在の与党は、次のようになります。

 

グローバリズム - 緊縮財政 - 右派 ・・・ 自民、公明、(維新)

 

次に、立憲民主党の立ち位置を考えてみますと、その最大の支持母体は連合です。連合は、労働者の利益を代表すべき労組の団体ですが、その実態は御用組合で、企業の利益を優先している。すると、連合と経団連は同じ立ち位置にあり、立憲の立場は次のように表現できます。

 

グローバリズム - 緊縮財政 - 左派 ・・・立憲民主党

 

このように見て行きますと、実は、自民と立憲というのは、とても近い立ち位置にあることが分かります。見かけ上の右派と左派の違いしかありません。仮に、自民の方を似非右翼と表現するならば、立憲は似非左翼だと言えるのではないでしょうか。グローバリズムや対米従属を標榜しておいて、右翼も左翼も嘘だろう、という訳です。

 

現在の日本は、大別して4つの政治的課題を抱えていると思います。以下の通りです。

 

1. 日米FTA
2. 消費税
3. 原発
4. 憲法

 

よくよく考えますと、これらの課題は2つの種類に分けることができる。日米FTAアメリカと直接やり合う訳で、これは国際的な課題だと言えます。消費税の増税は、法人税の減税と表裏の関係にある。従って、この問題は国際金融資本の利害に影響を及ぼす。よって、こちらも、国際的な課題だということになります。

 

他方、原発は、アメリカから言われてやっているのではなく、どうも日本国内の利権に支えられている。原発マネーの還流については、最近、関西電力の事例で明らかになりつつあります。また、小泉前首相も「原発は、総理が止めると言えば、止められる」と発言しています。よって、日本の原発問題というのはアメリカや国際金融資本の利害には、結びつかない。これは国内問題だと言えます。

 

最後に憲法ですが、私の読みとしては、これも国内問題だということになります。確かに、アメリカは米軍に代わって、日本の自衛隊に戦ってもらいたいと考えている。しかし、この点は2015年に成立した安全保障関連法(戦争法)に基づき、既に、日本は集団的自衛権を認めているのです。自衛隊は、ホルムズ海峡にまで出向くことができる。この時点で、米国政府やCSISは満足している。では、安倍政権が何故、憲法改正に熱心なフリをしているかと言えば、それは支持団体である日本会議などの顔色を窺っており、かつ、安倍政権の延命を図るための方便としてやっているのだと思います。何しろ、「憲法改正を成し遂げるまでは」と言い続けなければ、安倍晋三が総理を続ける意味がなくなってしまう。

 

1. 日米FTA ・・・ 国際的な課題
2. 消費税  ・・・ 国際的な課題
3. 原発   ・・・ 国内問題
4. 憲法   ・・・ 国内問題

 

何故このような話をするかと言うと、これで立憲民主党の立ち位置が明確になると思うからです。1番と2番の国際的な課題について主張すると、国際金融資本やアメリカ政府のご機嫌を損ねることになる。だから、立憲は何も言わない。他方、3番と4番の国内問題であれば、何を主張しても、国際金融資本とアメリカ政府のご機嫌を損ねることがない。立憲は、国内問題については威勢がいいのですが、国際的な課題となると、からっきしダメなんですね。立憲が主張している脱原発憲法改正反対、加えて夫婦別姓同性婚の容認など、いずれも国内問題だと言えます。

 

だから立憲民主党は、日米FTAの国会審議において、一応、反対票を投じはしましたが、戦わないのです! 嘘だと思うなら、枝野氏のツイッターを見てください。日米FTAには、全く触れられていません。

 

そもそも、グローバリズム、対米従属を旨としておきながら、“立憲”民主党という党名は、いかがなものか。立憲主義というのは、反グローバリズムであるはずです。(詳細は後述します。)だから、党名に惑わされて、かつては支持をした人々が、今、立憲を離れているのです。(かく言う私も、その1人ですが)

 

ただ、立憲民主党と一口に言っても、その党名の紛らわしさもあって、様々な党員がいるのも事実です。消費税廃止を主張する石垣のりこ氏、消費税減税を模索する荒井聡氏、MMTに基づく積極財政の可能性を探る須藤元気氏、本当の意味での立憲主義を考える山尾志桜里氏などの名前を挙げることができます。

 

ちなみに、荒井聡氏は、最近「格差解消と消費税を考える会」を立ち上げました。これは、山本太郎さんと馬淵澄夫氏が「消費税減税研究会」を立ち上げた直後だったので、立憲による“れいわ潰し”ではないか、という見方がありました。しかし、その後の情報によれば、「格差解消と消費税を考える会」が藤井聡氏を講師に招くということです。藤井氏は生粋のMMT論者(積極財政派)なので、これは本気で消費税の減税を考えていることが推察されます。“れいわ潰し”と言うよりは、立憲内部の分派行動だと思います。ちなみにこの会、共産党の小池氏も参加しており、同氏は「大変興味深かった」とツイッターで述べていました。小池氏はマルクス経済学には詳しいのでしょうが、MMTの勉強は、これからなのかも知れません。

 

ついでと言っては何ですが、国民民主党の立ち位置についても、述べておきましょう。現在、同党の小沢一郎氏は、年内の野党合併を主張しています。小沢氏の意向としては、立憲、国民、社民、加えて“れいわ新選組”の合併を意図している。興味深い動画があります。小沢氏は、元来、緊縮財政を主張していたと思われますが、この動画を見ると、積極財政に方向を変えていることが分かります。特に44分頃からが面白いので、ご参考まで。

 

小沢一郎・国会議員在職50周年記念インタビュー 全56分
(今後の政局については、44分から)
https://www.youtube.com/watch?v=IsweBmVdI4U

 

小沢氏が年内合併論をぶち上げた後、会食に誘ったのは枝野氏の方だった。ちょっと、二人の会話を想像してみます。

 

枝野・・・小沢先生、合併の範囲について、どうお考えでしょうか。
小沢・・・そりゃね、皆で一緒になればいいじゃないか。社民党にも声を掛けなきゃ。
枝野・・・分かりました。ところで、“れいわ新選組”の山本さんは・・・。
小沢・・・太郎君か。彼はね、なかなかのナイスガイだよ。
枝野・・・しかし、彼は消費税を5%に減税しなければ、と言っている。それは私たちとしては、飲めないんです。なんとか、小沢先生から説得してもらえませんか?
小沢・・・話は太郎君に伝えるけれども、ちょっと無理じゃないかな。

 

大体、そんな所だと思います。しかし、小沢氏と枝野氏のポジションを考えますと、接点は少ない。

 

反グローバリズム - 積極財政 - 左派 ・・・ 小沢氏
グローバリズム  - 緊縮財政 - 左派 ・・・ 枝野氏

 

よってこの合併話、どうなるかは分かりませんが、かなり無理があるように思います。更に、小沢氏のやり方についても、枝野氏は警戒している。小沢氏のやり方というのは、とにかく合併前は謙虚なのです。例えば、合併相手の政策を丸のみする。ところが一度合併すると、急に剛腕を発揮し始めるんです。枝野氏が小沢氏のこのようなやり方を警戒しているのは、間違いありません。

 

すなわち、現在、小沢 対 枝野という対決構図が、水面下で進行している訳で、関係者はかたずを飲んで見守っている。別の言い方をすると、どう転んでも良いように、関係者は様子を見ているということだと思います。国民民主の玉木代表が、同党の定例記者会見で消費税について聞かれても曖昧な答弁繰り返しているのは、彼が風見鶏だということです。

 

先の原稿で、スピン報道ということに触れましたが、上記のように考えますと、これを読み解くのは、そう難しいことではありません。

 

まず、日本国民に対して圧倒的な不利益をもたらす日米FTAの問題があった。このタイミングで、何故か、共産党の田村智子議員が「桜を見る会」の問題を取り上げた。意外にもその反響が大きかった。そこで、立憲がこれに飛び付いた。これは、野党全体で取り組んで行こう、ということになった。こういう経緯だったと思います。すなわち、まず、日米FTAの問題があって、立憲をはじめとする野党はこれに反対すべき立場にあった。しかしながら、これに反対すると国際金融資本やアメリカ政府を敵に回すことになる。そこで、「桜を見る会」をスピンに使った。「桜を見る会」の問題は、野党が使ったスピンだったということです。

 

一方、自民党にしてみると「桜を見る会」の問題は、思いのほか痛手となった。事案が単純で、庶民でも分かり易い。画像や写真がふんだんにあるので、テレビでも視聴率を稼げる。芸能人が絡むので、庶民が興味を持つ。これはマズイ、ということになって、沢尻エリカの事件をスピンに使った。

 

こうして、日米FTAの問題から国民の関心は、ドンドンずれて行く。この問題を積極的に取り上げている政治家って、山本太郎さんしかいない。右派の藤井聡氏も、そう言っています。

 

日本の行き先 藤井聡  5分
https://www.youtube.com/watch?v=A4HX7PjjLac

 

“れいわ新選組”は、次の衆院選に向けて、候補者の公募を始めました。既に、ネットだけで111人の応募があったそうです。やはり、単独で戦うしかなさそうです。その時は是非、消費税を5%に減税するということではなく、私は、消費税の廃止を主張していただきたいと思っています。

 

さて、これでグローバリズム勢力の分析は終わりです。後半として、反グローバリズム勢力を検討したいと思っています。近日中に、アップする予定です。

日米FTA 日本の民主主義が消える

当初の予定通り11月19日、日米貿易協定(牛肉、豚肉)と日米デジタル貿易協定が、衆議院本会議で可決されてしまいました。これはもう、参議院で否決をしようが、採決を拒否しようが、憲法60条、61条に基づく30日ルールによって、12月19日頃には日本の国内手続が完了し、来年の1月1日に発効します。

 

米国の議会向け説明文書
(1) 物品貿易・・・第1段階
(2) 衛生植物検疫(SPS)
(3) 税関、貿易円滑化、原産地規則
(4) 貿易の技術的障害(TBT)
(5) 良い規制の慣行
(6) 透明性、広告、管理
(7) サービス貿易(電子通信及び金融サービス含む)
(8) デジタルの物品貿易及びサービス越境データ移転・・・第1段階
(9) 投資
(10) 知的財産権
(11) 医薬品及び医療機器における手続の公正
(12) 国有企業及び政府管理企業
(13) 競争政策
(14) 労働
(15) 環境
(16) 反腐敗
(17) 貿易救済
(18) 政府調達
(19) 中小企業紛争解決
(20) 紛争解決
(21) 一般規定
(22) 為替

 

11月19日の衆議院で可決した項目は、上に記した一覧のうち、(1)と(8)ということになります。私の先の原稿に記しました、ISDS条項は上の図の(20)で、また、為替条項は(22)ですので、まだ、これらの恐ろしい条項を日本が受け入れた訳ではありません。

 

但し、今後、残る20項目に関する協議については、既に日米共同宣言(安部総理が署名)に謳われていますので、確実に開始されます。そして、その時期は来春以降であると言われています。この点、添付の長周新聞の記事をご参照ください。

 

長周新聞 主権蹂躙も甚だしい日米FTA 国会承認を急ぐ
政府が明らかにしない協定の内実
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/14303

 

どうやら今回の日米貿易協定(第1段階)については、トランプの次期、大統領選に利用されたという意味合いが強いようです。アメリカの大統領選は、来年の11月ですが、選挙戦は、そのはるか前の段階で始まります。トランプとしては、至急、成果が欲しい。そこで、第1段階の日米貿易協定の締結を急ぐ必要があった。

 

一方、日本側はと言うと、まずアメリカから、日本製の自動車とその部品の輸入に対して25%の関税をかけるぞ、と脅された。そこで、経産省役人の天下り先である自動車産業を守るために、農業を差し出したということのようです。また、今回の第一段階の交渉では、日本のコメは守られた。アメリカでコメの生産が盛んなのはカリフォルニア州だ。そして、同州では民主党が強い。トランプとしては、どうせ選挙で勝つ見込みのないカリフォルニア州に配慮をする必要がなかった。しかし、既に関係団体からクレームが出ており、今後の第2段階の交渉において、トランプは日本のコメに関する市場開放を強く求めてくるだろう、と言われています。今後、日本のコメまでアメリカに売られる可能性が高いということです。

 

問題は、先に述べました日本の国民皆保険制度が破壊され、農業が売られることばかりではないようです。今後、私たち日本人は、アメリカで作られた農薬まみれ、遺伝子組み換え、ゲノム編集が行われた食料を食べさせられることになりそうです。詳細は、同じく長周新聞さんの以下の記事をご参照ください。この記事を読みますと、絶望的な気分になること請け合いですが、これが私たちの直面する現実なのだろうと思います。

 

長周新聞 食の安全を放棄する日米FTA 東京大学教授 鈴木宣弘
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/13592

 

更に、私が懸念しているのは、来年以降の主要日程です。

 

2020年春 ・・・・ FTA第2段階交渉開始
2020年夏 ・・・・ 東京オリンピック
2020年11月 ・・・ アメリカ大統領選挙
2021年9月 ・・・ 安部総理 任期満了

 

すなわち、馬鹿な国民がオリンピックに熱狂している間に、その裏で、日米FTAに関する交渉が、着々と進行するのではないか。桜を見る会や沢口エリカの逮捕がスピン報道(権力者が国民の関心をそらすための報道)ではないかという論議がありますが、東京オリンピックこそが最大のスピン報道になるのではないか。

 

そして、次の衆議院選挙がいつになるかという問題ですが、仮に安部総理が当分衆議院を解散せず、日米FTAの第2段階に合意してしまえば、次の政権でこれをひっくり返すことは至難の業となります。

 

日本における規範の優先順位は、次の通りです。

 

1. 憲法
2. 条約 ・・・ 日米FTA
3. 法律

 

すなわち、日米FTAは日本の法律よりも、上位に位置することになります。従って、日米FTAがフルパッケージで締結された場合、それにそぐわない日本の法律は、改正しなければなりません。既に、韓国ではそのような法律改正がなされているようです。しかし、元来、法律というのは、主権者である国民が国会議員を選出し、その国会で決めるべきものではないでしょうか。それが、民主主義の根幹ではないでしょうか。仮に、日米FTAがフルパッケージで締結された場合、日本の民主主義が消滅してしまうのではないか。

ヒーローの条件

現代に生きる私たちは、社会的な課題や心の問題を抱えています。これらを解決するためのヒントは、古代の文化にあるのではないか。そう思って、このブログでは、主に古代の文化を研究してまいりました。

 

古代とはいつ頃の時代を指して言うのかという問題もありますが、これは人間が文字を持つ前の社会だと考えて良いと思います。文字を持たない“無文字社会”の人々は、どのように物事を認識し、いかに困難を克服して来たのか。そういうことを考えている訳です。文字がないので、無文字社会の文化を直接的に表現している書物は存在しない。そこで、無文字社会について調査、検討することは困難を極める訳ですが、幸い、民俗学文化人類学の学者、フィールドワーカーの方々の努力によって、ある程度、研究は進んで来ています。例えば、私たちの身近な所では、今もアイヌの文化が生きている。アイヌの人々は、文字を持っていなかったのです。

 

私なりにアイヌの文化を学んでみた所、“シャーマニズム”に行き当たった。この言葉の源は、シベリアに住むエヴェンキ族の言語に由来すると言われています。(他の説もあります。)彼らは、森や湖に精霊が宿っており、精霊に祈りを捧げることによって、例えば病気を治すなど、困難を克服することができると考えていた。その祈りを捧げる際にリーダーシップを発揮するのが、シャーマンです。一方、アイヌの人々は、動物や自然など、彼らが認識しようとする全ての対象に、カムイが存在すると考えた。だからアイヌの人々は、カムイに祈りを捧げる。

 

当初、シャーマニズムはシベリア地方に固有の文化だと考えられていましたが、研究が進むにつれ、それは世界的に共通する古代の文化であったことが分かってきます。そして、日本も例外ではないと思うのです。

 

かつて日本のどこかに存在していたと言われる邪馬台国には、卑弥呼という女性シャーマンがいた。古くから日本では修験道の山伏が、ホラ貝を持って山中で修行を続けています。この山伏も、病気を治すための儀式を取り仕切ってきました。そして、日本には神道があって、神主が神様に祈りを捧げている。古代の神道は、天皇制を生み、天皇陛下は今日も護国豊穣を願って、神様に祈っている。日本という国も例外ではなく、古代においては、シャーマニズムがその文化の中核をなしていたのだと思います。

 

では、シャーマニズムの構造とは、どうなっているのでしょうか。まず、文化を共有する人間集団がある。例えば、精霊に祈るのか、カムイに祈るのか、そういう文化的なバックグランドを共有している人間集団がある。これを私は、“文化共同体”と呼んでいます。

 

そして、文化共同体の構成メンバーの一人、若しくはその全体が、困難に直面する。例えば、誰かが病気になったり、日照りが続いて、共同体の全体が困難に向き合うということがある訳です。そこで、シャーマンが登場し、文化共同体のメンバーが集まって、祈りを捧げる。こういう構造になっているのだと思うのです。

 

1. 文化共同体が存在する。
2. 文化共同体が困難に直面する。
3. シャーマンが登場する。
4. 祈りを捧げる。

 

このような文化的な構造は、実は、今日にも生き続けているのではないか。もちろん、その形態は分化し、様々なバリエーションを持つようになって来た。例えば、病気を治す医者、若者を熱狂させるロックスター、人前で芸を披露する芸人、そして政治家など、全てその起源は同じで、シャーマニズムから来ていると思うのです。

 

では、シャーマンになれる人の条件について、考えてみましょう。

 

まず、文化共同体のメンバーである必要があります。例えば、アイヌの儀式において、精霊に祈りを捧げたのでは、話になりません。

 

次に、大変な苦労を経験し、それを乗り越えた人でなければいけません。例えば、恐山には死者の魂を呼び起こす“イタコ”と呼ばれる女性がおられます。彼女たちは、目の不自由な人が多いそうです。同じ東北で“ゴミソ”と呼ばれる女性がおられる。彼女たちは、離婚するなどの理由により、家を出ざるを得なかった。そこで、山野へ移り、祠などを宿として生活をする。やがて、師匠を見つけて修行を積み、祈祷師としての生活に入る。これはもう、大変なご苦労を経験されている。

 

3番目としては、普通の人には真似できないようなことをやってみせる、ということがあります。自分が真のシャーマンであることを、証明してみせる必要がある訳です。あるフィールドワーカーが、シャーマンに対し疑念を示した。すると、そのシャーマンはいきなり自分の体にナイフを突き刺した、という逸話があります。その他にも、自分の体にヤリを突き刺す、炭を食べる、などの事例が報告されています。

 

4番目としては、他の誰よりも、その共同体が持っている文化や利益を守ろうという情熱を持っていること。例えば、シベリア地方の人々であれば、森に精霊が住んでいると考える。その精霊に祈れば、誰かの病気が治る。そう信じている訳で、そこに一かけらの疑念があったり、誠実さを欠いていたりした場合、人々はそのシャーマンを信じません。シャーマンとは、全身全霊を尽くして、命がけで、共同体の文化を守ろうとする。例えば、雨乞いの儀式をあるシャーマンが仕切る。それでも雨は降って来ない。そういうことは当然、ある訳です。すると、あのシャーマンは偽物だと言われ、場合によっては共同体のメンバーから殺されてしまう。長い歴史の中には、そういうこともあったのではないか。誇張ではなく、本当にシャーマンというのは命がけだった。

 

(もう一つ、5番目として、シャーマンは境界を超えた人でなければならない。私はそう思っているのですが、この話をするとややこしくなるので、本稿では省略します。)

 

まとめてみましょう。

 

1. 文化共同体のメンバーであること。
2. 人生の苦労を経験し、それを乗り越えた人であること。
3. 普通の人には真似できないことをやれること。
4. 誰よりも、共同体の文化や利益を守ろうとする情熱を持っていること。

 

無文字社会におけるシャーマン。これを現代社会に置き換えると、どのような言葉が相応しいでしょうか。“ヒーロー”というのはどうでしょうか。その人は、単なるリーダーではありません。人々の心の奥底に働き掛け、共同体の文化と利益を守るために、命懸けで何かを実行するのです。だから、人々はヒーローの言葉に耳を傾け、ヒーローの一挙手一投足に注目するのです。そして、人々はヒーローを通じて大切な何かを認識し、意思決定を下す。

 

現在、日本という国に住む全ての人々は、同じ言語を母語としています。すなわち、この国に住む全ての人々は、文化共同体を形成していると言えます。そして私たちの共同体は、今、大変な危機に直面しています。私は、日米FTAがそれだと思っています。だから、私たちには、ヒーローが必要なのです。真のヒーローを選ばなければ、私たちはこの危機を乗り越えることができません。では・・・

 

私たちのヒーローは、東大卒の学歴エリートでしょうか? 違います。

 

私たちのヒーローは、お金持ちでしょうか? もちろん、違います。

 

私たちのヒーローは、世襲の政治家でしょうか? とんでもありません。

 

私たちのヒーローは、日米FTAの危険性について、捨て身で、今、辻説法をしている人ではないでしょうか。

 

山本太郎(れいわ新選組代表)街頭記者会見福島県郡山市 2019年11月16日
(日米FTAに関する話は、1時間36分頃から)
https://www.youtube.com/watch?v=87xqJptAA3w

 

末筆になり恐縮ですが、私の原稿をツイッターやブログなどで拡散いただきました方々、本当に有難うございました。この場を借りて、お礼申し上げます。

日米貿易協定 恐怖の第2段階(日米FTA)

前回の原稿では、日米貿易協定の第1段階について考えてみました。こちらは、既に11月15日の衆議院外務委員会にて可決されました。反対の意見表明を行った共産党の穀田議員の発言を聞きますと、私が前回の原稿に記したこととほぼ同じ内容で、少しびっくりしました。

 

共産党 穀田恵二議員 食の安全を脅かし経済主権を破壊 2019.11.15
https://www.youtube.com/watch?v=rU6gwmAp9_g

 

この第1段階は、11月19日に日本の衆議院本会議で採決されると、実質的には、効力が発生することになります。

 

今回は、今後、日米貿易協定がどのように進展するであろうか、推測してみたいと思います。前回の原稿に記しましたように、2019年9月25日に発表された日米共同声明には、「その後、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題について交渉を開始する意図を確認する」と明記されています。これが第2段階ということになります。

 

“れいわ新選組山本太郎さんの説明によれば、日米貿易協定の審議項目は、全部で22項目に及ぶとアメリカ側が発表している。第1段階は2項目だったので、残る20項目がこれから審議されることになります。

 

山本太郎(れいわ新選組代表)おしゃべり会山形市2019年11月14日
(該当箇所は、1時間24分頃から始まります。)
https://www.youtube.com/watch?v=Ikvnw1E6I6U

 

この残る20項目の中に、日本の国民健康保険に関する事項が含まれているか否か、という問題があります。かつて、政府は含まれていないと説明していたようですが、こちらもアメリカ側の公表資料によって、審議事項に含まれていることが、共産党の田村智子議員の国会における質疑によって判明しています。やはり、これは大変だ、盲腸の手術で700万円も掛かってしまう!

 

私が何故、盲腸の手術をそんなに心配しているかと言うと、その根拠となる動画があるのです。22分とちょっと長めですが、是非、ご覧いただきたい。ちなみに、この動画ではTPPと言われていますが、この動画が撮影された時点では、アメリカが参加する前提でTPP交渉が行われていた訳です。その後、アメリカは交渉から離脱し、日本は他の10か国とTPPを締結した。集団で交渉するよりも、1対1で交渉した方が有利になると考えたアメリカは、その後、日本に対して日米貿易交渉を働き掛けてきた、ということです。

 

TPPより日米FTAは数段ヤバイ(動画) 22分
https://www.youtube.com/watch?v=SCtL08EfFlU&feature=youtu.be

 

仮に、月額5万円の保険に加入していたとしても、保険の適用率が7割だとすると、3割が自己負担となる。よって、700万円の3割、210万円の実費負担が必要となる。しかし考えてみますと、問題は盲腸だけではない。風邪薬だって、高騰する。例えば、1週間分で5万円とか・・・。歯医者だって、上がる。産婦人科だって、上がる。高齢者に対する介護だって、上がる。こうなりますと、日本の国民健康保険は、収入に対する支出が急騰する訳で、結局、破綻することになります。これでは、過半の日本国民が生きていけない!

 

しかし、本当にそんなことが起こり得るでしょうか? 私自身、疑問がない訳ではありません。仮に日本の国民健康保険制度が崩壊した場合、第一に病院へ行く患者の数が激減する。薬の売り上げだって低下する。すると、病院の経営が困難となる。日本の製薬会社だって、売り上げが落ちるに決まっています。日本医師会や製薬会社は、今日まで、自民党を支えて来たはずです。自民党が、その支持団体に対して、切り捨てるようなことをするか、という問題があります。

 

しかし考えてみますと、今日まで、既に自民党はその支持団体や支援者たちを切り捨てて来たのではないか。種子法の廃止と今回の日米貿易協定(第1段階)で、農業、畜産業の人々が切り捨てられた。永年、自民党を支持してきた郵政の人たちも、民営化によって被害を被った。(郵便局では、民営化に伴ってノルマが厳しくなったそうです。それが、今般の簡保やゆうちょ銀行の不正につながったと言われています。)

 

アベノミクスによる最大の被害者は、もしかすると銀行なのかも知れません。安部政権は、大量の国債を発行し、銀行に買わせた。それを買いオペによって、日銀が買い取る。結果、市中の銀行には大量の資金が流入し、金利が低下した。銀行は、膨大な資金を持たされたにも関わらず、不景気なので融資先がない。日銀に預けている資金は、マイナス金利になるので、置いておくと目減りする。これで、銀行の経営が成り立つはずがありません。勢い、銀行は合併を繰り返す。合併というのは、要は、体のいいリストラです。銀行業界は全銀協という業界団体を作っている。当然、自民党にも献金を繰り返して来たのではないか。

 

やはり、安部総理率いる自民党政権というのは、その支持者や支持団体であっても、バッサリと切り捨てる可能性がある。すると、日本医師会や製薬会社だって、切られる可能性はある訳で、結論としては、日本の医療制度が破壊される可能性は、十分にあると言わざるを得ない。実際、最初に犠牲にされたのは、アメリカの国民だった。続いて、(多分)カナダやメキシコが犠牲となり、魔の手は韓国に及んだ。搾れるだけ搾りつくした彼らは、次のターゲットとして、日本を狙っている。

 

ところで、今後締結される可能性のある日米FTAには、ISDS条項、為替条項、ラチェット条項などが含まれる可能性があると指摘されています。順に見ていきましょう。

 

〇 ISDS(Investor State Dispute Settlement)条項/投資家対国家の紛争解決制度
これは、先に紹介しました動画の中でも、説明されています。具体的には、日本に投資をしたアメリカの企業が、日本政府や日本の政府系機関を訴えることができる、という制度です。一度、訴えを提起されたら、日本側に勝ち目はありません。アメリカ系の機関(国債投資紛争解決センター)において、アメリカのルールに従い、裁定が下される。例えば、日本政府が国内の産業を守ろうとして、何らかの支援策を講じようとする。すると、このISDS条項に従って、日本政府が訴えられる。従って、今後、ISDS条項を含む日米FTAが締結された場合、日本の産業は政府の援助を受けにくくなる。

 

〇 為替条項
米ドルと円の関係で、円安になると日本はアメリカに輸出しやすくなります。そこで、安倍政権は大量に国債を発行して、円をジャブジャブの状態にした。実際、これで為替は円安に動き、日本の輸出企業は潤って来た訳です。しかし、アメリカ政府にしてみると、これが面白くない。日本は為替を操作している悪い国だ、という意見が出てくる。そのため、今後、アメリカがFTAに乗じて、この「為替条項」を主張してくる可能性がある。この条項に合意すると、日本は為替に影響するような政策を、独自に決定することができなくなります。すなわち、日本は独自の判断で、国債すらも発行できなくなる可能性がある訳です。これは、日本という国家が経済に関する主権を失うことを意味している。例えば、国債を発行し、災害に備えて国土を強靭化しようと考えている学者がいますが、そういうことはできなくなります。MMT(Modern Monetary Theory/現代貨幣理論)に基づく政策や、“れいわ新選組”の掲げている政策も、実現困難となります。

 

〇 ラチェット条項
ラチェットというのは、ネジを締める工具のことです。例えば、六角形の頭をしたボルトがある。すると、箱型で、同じく六角形の形をしたラチェットという工具を、上からカポッと被せるんです。そして、ラチェットを左に回すとネジが閉まる。右に回すと、ラチェットは空回りする。従って、ラチェットを左右に動かし続けると、一方的にボルトは締まって行く。そういう工具なんです。これになぞらえたFTAにおけるラチェット条項というのは、一度緩和した規制は、決して強化されることなく、ただひたすら、緩和の方向に動くことのみが許される。そういう条項を意味しています。何だか、締まっていくのはボルトではなく、私たちの首のような気がしますけど・・・。

 

私たち日本人は、今、大変な危機に直面しています。しかし、政府は説明をしたがらない。むしろ、隠そうとしている。メディアも報道しない。私たちは、どうすれば良いのでしょうか。来年11月に予定されているアメリカの大統領選挙で、仮にトランプが落選し、民主党系の候補が当選すれば、日米FTAは回避されるかも知れません。そこまで時間的な余裕があるのか、それは私にも分かりませんが。一方、日本国内の情勢を考えた場合、勝負は、次の衆院選ではないでしょうか。ここで現政権が勝利するようであれば、日米FTAの危険性は、各段に高まります。

 

とりあえず、私は、次の事項を提案させていただきます。

 

1. 日米FTAに関して、正しい知識を習得すること。
2. 日米FTAに関して、日本の各政党の態度を見極めること。
3. できる範囲で、日米FTAに関する情報を拡散すること。
4. 最後まで、あきらめないこと。