文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

憲法論

憲法に異議あり!

最初に述べておく必要があると思うのですが、私は、日本国憲法がとても好きです。特に、その第12条を肝に銘じております。 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。 素晴らしいじゃありま…

民主的で強い国

来年の4月には、日米FTA第2段階の交渉が始まります。フルパッケージで日米FTAが締結されると、すなわち、ISDS条項や為替条項を含む条約が締結されると、この国に生きる普通の人々が、生きていくことさえ困難な時代がやって来る。農薬まみれや遺伝子組み換え…

自民党の憲法改正案

ここの所、ブログの更新が滞っております。日常生活における些事に翻弄されているのがその主因ではありますが、少し考えをまとめるのに時間を要しているのも事実です。憲法とは、やはり複雑なものだと改めて感じております。 そこで、今回は比較的簡単なトピ…

No. 252 憲法の声(その19) 宗教と憲法

ホッブズは、人間の能力には大差がないから、人は皆平等だと考えました。しかし、そうでしょうか。本当は、能力に差があったとしても、人は平等なのではないか。 最近問題となっている人権侵害の事例というのは、その根源に“平等”という意識の欠如があるので…

No. 251 憲法の声(その18) 神なき時代の平等主義

“憲法の声”と称して連載しております本稿ですが、ちょっと困ったことになりました。例えば推理小説であれば、真犯人は最後に分かる。これが途中で分かってしまうと、読者の興味は消失します。本稿にも同じような事情があって、日本国憲法に込められた理念や…

No. 250 憲法の声(その17) 憲法原理の出発点

憲法の教科書を読みますと、日本国憲法には次の3大原理があると記されています。 1. 基本的人権の尊重2. 国民主権3. 平和主義 また、自由、平等、平和の3要素を挙げる例も見かけます。民主主義は国民主権と同義だとしても、立憲主義には人権保障と権力…

No. 249 憲法の声(その16) ロックの観念論

ジョン・ロックは、私たちが日常的に見たり認識したりしている物、すなわち経験的対象のことを観念であると定義づけました。そして、この経験的対象を分解していくと微小な粒子やその集合体から成り立つ“物そのもの”が存在すると考えたのです。 心 - 観念/…

No. 248 憲法の声(その15) ロックの経験論

ブログの更新、諸般の事情により、大分間が空いてしまいました。申し訳ありません。 さて、少し論点を整理しましょう。ルターとカルヴァンは、概ね、宗教論に終始していました。しかし、ホッブズから突然、複雑になる。これには、次のような事情があったよう…

No. 247 憲法の声(その14) 類似性と差異

民俗学の折口信夫氏は、人間の認識能力について、咄嗟に類似点を直観する「類化性能」と、反対に差異を認識する「別化性能」の2つがあり、古代人は類化性能によって世界を認識し、現代人は別化性能によって認識すると考えた。 古代人・・・類化性能・・・類…

No. 246 憲法の声(その13) それでも真理は存在する。

本を読んでおりましても、なかなか、すぐには分からない。しかし、いろいろ当たっておりますと、ストンと腑に落ちることがあります。 文献14によりますと、ヘーゲルは次のように考えていた。 “矛盾の発端は、「自由」でありたいという各人の欲望の本性にある…

No. 245 憲法の声(その12) 理性主義、ロックからポストモダンまで

前回に引き続き、理性主義について考えてみます。 ジョン・ロックは、次のように考えた。まず、全知全能の神がいて、神は人間だけに理性を与えた。そして、神は啓示によって人間に真理を告げる。しかし、啓示については、人間が理性によって解釈すべきである…

No. 244 憲法の声(その11) ロックの理性主義、そして立憲・民主主義の起源

イギリスは、何かとややこしい国です。英語圏では、UK(United Kingdom)と呼ばれ、日本語ではイギリスと言われる。イギリス本島の西側にアイルランド島というのがありますが、その北部はイギリス領北アイルランドで、南部がアイルランド共和国になっている…

No. 243 憲法の声(その10) ピューリタン革命

前回の原稿で、物語的思考については、認識の及ぶ範囲が狭く、それでは追いつかない程ヨーロッパ人の視野が広がったため、論理的思考方法が生まれたのではないか、ということを述べました。しかし、一方、現代人である我々は、心を癒すために物語的思考、閉…

No. 242 憲法の声(その9) ホッブズのコモン・ウェルス論

領土をめぐる紛争、カトリックとプロテスタントの戦い、魔女狩り、拷問、そして奴隷制などに揺れ動くアナーキーな社会情勢の中で、ホッブズはそれでも人々には、生きる権利があると考えた。そして、人々が生き延びるためには、人々自身が武器を捨てる必要が…

No. 241 憲法の声(その8) ホッブズの平和主義

ホッブズの思考は止まらない。前回の原稿に書いた通り、まずホッブズは、人間の体力、知力に大差はなく、人間は平等だと考えた。そして、平等だから、戦争が起こると主張する。仮にAさんが畑を耕し、農作物を収穫していたとする。しかし、人間の体力、知力に…

No. 240 憲法の声(その7) ホッブズの平等論

忘れないうちに書いておきます。歴史主義的文化人類学で分かるのは、宗教までの文化でした。これは幾度となく、このブログに書いてきたことです。そして今、私が辿ろうとしている憲法の歴史というのは、宗教以後のことです。すると、両者を足すと、人間の歴…

No. 239 憲法の声(その6) 衝撃のホッブズ

ルターやカルヴァンについて検討したことは、決して無駄ではなかったようです。当時の時代環境について知ることができたし、加えてこれから述べるホッブズの偉大さを噛みしめることができると思うからです。そして私は、このブログでホッブズについてご紹介…

No. 238 憲法の声(その5) カオスとしての宗教戦争

前回の原稿で、権力には3種類あると書きました。その呼称なんですが、最後に“権力”という言葉を加えた方が分かり易いのではないかと思い直しました。変更させていただきます。 規範制定力 → 規範制定権力軍事力 → 軍事的権力経済力 → 経済的権力 神聖ローマ…

No. 237 憲法の声(その4) 神聖ローマ帝国における権力の構造

注文していたカルヴァンに関する本(文献9)を読んでおりましたら、面白い記述がありました。 ルターが火を付けた宗教戦争は、ヨーロッパ各地に飛び火して行く。しかし、当時は現代に比べると国家という枠組みが明確ではなかった。そこで、カトリック勢力と…

No. 236 憲法の声(その3) そして宗教改革が始まる

<1517年10月31日 95か条の提題>ローマ教皇の許可を得てアルブレヒト選帝侯が販売していた贖宥状(しょくゆうじょう)に反発したルターが、95か条の提題(以下「提題」という)をヴィッテンベルクにある教会の扉に掲示した。これが筆写によって各地に伝えら…

No. 235 憲法の声(その2) マルティン・ルターの信仰

2.マルティン・ルターの信仰 宗教改革と言えば堕落したカトリックに対し、ルターが反旗を翻した所から始まった。そうお考えの方が多いのではないでしょうか。そう説明している文献もありますが、実際にはそう簡単なものではなかった。その説明をする前に、…

No. 234 憲法の声(その1) 宗教改革の時代

私の愛する日本国憲法に対し、「あれはGHQが1週間で作ったものだ」という批判があります。しかし、そんな馬鹿なことはありえません。憲法を貫く立憲主義や民主主義という思想は、ひたすら戦争を続けてきた人類の歴史に照らして考えますと、そう簡単に発想さ…

No. 233 憲法パトリオティズム

今更ながら、私は、ほとほと人間が嫌になってしまったのです。競争系のメンタリティを持った序列主義者たち。彼らは、自らの序列を上げるために、格上の者のご機嫌ばかりを伺う。ヒラメ、太鼓持ち、茶坊主、風見鶏。こういった人たちを揶揄する言葉は、枚挙…

No. 232 集団スケールと憲法

前回の原稿で、「私がここまで勉強した範囲では、平和主義にはあまり長い歴史がなく、第2次世界大戦後に出てきた考えた方ではないか」という趣旨のことを書いてしまいましたが、正確なことが分かりましたので、訂正させていただきます。文献1に、「早くは17…

No. 231 憲法の構成要素(その2)

立憲主義の歴史的な変遷について、文献1は次のように説明しています。 1.絶対王政・・・立憲主義が存在しない状態。 2.制限君主制(=立憲君主制)・・・国王が参加する議会が、立法権を持つ。 3.二元型議員内閣制(18世紀末頃の欧州)・・・国王と議…

No. 230 憲法の構成要素(その1)

そもそも私の疑問は、例えば“絶対王政”と呼ばれる独裁国家が、どのように変遷して今日の日本のような“民主国家”へと変容したのか、ということです。 まず、国家とは何かという問題が生じます。一般に「領土、国民、統治権(主権)が国家の三要素」であると言…

No. 229 憲法の声を聴け

文化領域論に関する公式原稿(通し番号付き)をアップしてから、2か月以上が経過してしまいましたが、勇気を出して(?)、このブログを再開することに致します。 その間も文化領域論については考えておりましたが、特に「文化とメンタリティの領域図」につ…