文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

反権力としての文明論(その2) 権力についての試論-暴力型

私たちの暮らしのそこかしこに、権力は存在する。時にそれは、とてつもなく不愉快なものであるが、人々はそれに気づくことなく、権力を行使したり、またはその被害者となったりしているに違いない。権力には、例えば国家権力のように大きなものから、男女間…

反権力としての文明論(その1) はじめに

国内において、犯罪が多発しては困る。だから、犯罪者を取り締まる警察権力が必要だ。国の外に目を向ければ、沢山の外国があって、どこかの国が攻めてくるかも知れない。だから、国民は一致団結して、強い権力を持った国家を設立する必要があるのだ。そう主…

フーコー三角形

ミシェル・フーコーの思想を形作る重要な要素は、3つある。それは権力、知、主体であって、これらの3要素を線で結んだものをフーコー三角形と言う。 一体、何の話? そう思った方のために、極めて分かりやすく私の考え方を説明しようというのが、本稿の趣旨…

右翼と左翼の源流

そもそも、政治の世界には何故、右翼と左翼が存在するのだろう。どうもその理由は、歴史の中に答えがある。結論から言ってしまおう。右翼の源流は宗教にあり、左翼のそれは科学にある。 右翼・・・宗教 左翼・・・科学 どうりで、この2つの折り合いは悪い訳…

新しい思想

いきなり私事にて恐縮だが、私は、日本の政治を諦めることにした。アベ友の山口敬之による準強姦事件をもみけした中村格が、警察庁の長官に昇進したらしい。この国に正義はないのである。私は長い間、巨悪が究明され、司法の手によって罰せられることを望ん…

ソクラテスの魂(その9) あとがき

約3か月に渡って掲載してきた本シリーズを終わるに際して、雑駁にはなるが、これまで書き洩らしてきたこと述べたいと思う。 まず、歴史的な背景について。古代ギリシャにおいてもシャーマニズムが息づいていたことに、私は少なからず驚きを覚えた。洋の東西…

ソクラテスの魂(その8) 思想を持つということ

ソクラテスが登場する以前から、自然哲学と呼ばれる思想の試みがなされていたのであって、これはその後の自然科学へとつながったに違いない。ソクラテスもそれを学ぶが、やがて、決別する。つまり、哲学と自然科学の緊張関係は、その起源から始まっていたこ…

ソクラテスの魂(その7) 魂と知

まず、前回の原稿における私のミステイクについて、訂正すると共にお詫び申し上げなくてはならない。前回の原稿で私は、「ソクラテスの弁明」について、1回目の採決の後で、2回目の採決の直前に弁明がなされたのではないかと述べたが、これはとんでもない誤…

ソクラテスの魂(その6) 死に至る経緯

そもそも哲学の起源は、どうなっているのだろう。そう思って入門書を調べてみると、最初の哲学者は古代ギリシャのタレス(前624頃~546頃)だと記されている。タレスは「万物の大元(アルケー)は水である」と主張したという。その後、空気だとか火などがア…

ソクラテスの魂(その5) 希望としてのエクリチュール

それにしても、酷い世の中になった。コロナウイルスが蔓延しているからではない。疫病の流行は、何も、コロナが初めてのことではない。そうではなくて、政府の対策がことごとく失敗していることの方が、私にしてみれば、余程危機的だと思えるのだ。そもそも…

ソクラテスの魂(その4) 個別的な真理

身体は死滅しても、魂は死なない。だから、身体よりも魂の方が重要なのだ。ソクラテスはそう考えたので、自らの魂に忠実であろうとした。そして、死刑の評決に従って、毒の盛られた盃を飲み干して死んだのである。このようにショッキングな死に方をしなけれ…

ソクラテスの魂(その3)

結局人間は、互いに理解し合うことはできないのではないか。昔から「十人十色」などと言うが、それは1億2千万人(日本の人口)いれば1億2千万色になる訳で、同じ価値観を持つ人間は、2人といないに違いない。 例えば、水について研究してみれば、それは必ず…

ソクラテスの魂(その2)

名前だけなら、中学生でも知っているであろうソクラテス。私も、軽い気持ちでこの原稿に着手した訳だが、それは誤りだった。もちろん、ソクラテスの思想を現代人である私たちがそのままの形で受け入れることは困難だ。しかしその思想には、混迷を極める現代…

ソクラテスの魂(その1)

現在、日本はコロナ禍に見舞われ、その対策にことごとく失敗している。それにも関わらず、東京五輪を強行しようというのだから、呆れるという他はない。日本の民主主義は瀕死の状態だと言いたいところだが、冷静に考えてみると、この国において本当の意味で…

カオス、統合、分化

樹木から離れたリンゴは真下に落ちるし、水は摂氏0度で氷結し、100度で気化する。このように自然界には規則性があるが、人間の世界はそう単純ではない。かつて狩猟採集を生業としていた時代があった訳だが、ある部族は平和に暮らし、別の部族は戦闘的だった…

生命力の衰退

ミシェル・フーコーの遺作「自己への配慮」の中に、こんな一節がある。 - 驢馬を棒切れで打つことは、人々を治める仕方ではない。何が役立つかを、われわれに明らかにしつつ、われわれを理性の持ち主として治めよ、そうすれば、われわれは従うであろう。何…

文化系のコロナ論

いつ終わるとも知れぬコロナとの戦い。医療現場は疲弊し、一般国民のメンタルも限界に近づきつつある。日本における死者数は1万人を超えたが、これは中国の死者数よりも多い。既に、台湾、ニュージーランド、オーストラリアなどの島国においてコロナの問題は…

ご挨拶

ようやく春めいて来ましたが、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。また、様々な形でこのブログにご協力をいただきました皆様、このブログを読んでくださった皆様、本当に有難うございました。とても励みになりました。 さて、「領域論」ですが、…

領域論(その21) 領域と自由

<主体が巡る7つの領域> 喪失領域・・・境界線の喪失、カオス、犯罪、自殺、認識の喪失 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 秩序領域・・・監獄、学校、会社、監視、システム、階級 …

領域論(その20) 領域と人格

<主体が巡る7つの領域> 喪失領域・・・境界線の喪失、カオス、犯罪、自殺、認識の喪失 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 秩序領域・・・監獄、学校、会社、監視、システム、階級 …

領域論(その19) 領域と政治

それぞれの領域を古いものから新しいものへ、並べ変えることはできないだろうか。そこで、次のように考えてみた。 喪失領域・・・かつて人間は、境界線のないカオスの中で生きていた。 生存領域・・・やがて人間は家を作り、人間らしい生活を始める。 原始領…

領域論(その18) 領域と芸術

<主体が巡る7つの領域> 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラクター、…

領域論(その17) 領域と音楽

<主体が巡る7つの領域> 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラクター、…

領域論(その16) 領域と文学

<領域論/主体が巡る7つの領域> 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラ…

領域論(その15) 自己領域 / 私とは何か

長い道のりを経て、とうとう私も、この永遠の問いとで言うべき論題に辿り着いた。その論題とは、「私とは何か?」という単純な設問のことである。 この話、一体どこから始めればいいのか私にもよくは分からないが、とりあえず「時間」について、記述してみる…

領域論(その14) 喪失領域

人間を集団で見た場合の5つの領域については、既に述べた。しかし、それだけではどうしても説明し切れない現象が、人間の世界には存在する。それを私は、「喪失領域」と呼ぶことにした。この領域においては、境界線というものが失われるのだ。善と悪、生と…

領域論(その13) 秩序領域

権力が、秩序をもたらす。そのことを端的に示すのが、この「秩序領域」である。 その外観に注目して、人間は植物図鑑を作った。そして、それぞれの機関が持っている機能に注目し、人間は動物図鑑を作った。そのようにして、ある総体を要素に分解することによ…

領域論(その12) 記号領域 / 奇妙な符号

領域論/主体が巡る7つの領域 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラクタ…

領域論(その11) 記号領域 / 主体を凌駕する記号

記号とは、音、光、形、色、物、人の表情、その他の要素によって構成され、対象を指し示すものであり、人の五感によって認知されるものである。 このように定義してみると、私たちが認知している全ての事柄が、記号であることになる。カントの純粋理性批判を…

領域論(その10) 認識領域 / 「知」を開示せよ

先の原稿で述べた通り、大和銀行ニューヨーク支店事件に関する判決で、最高裁は「リスク管理の大綱は、これを取締役会において決することを要す」と述べた訳だが、その際、最高裁の判事がどの程度、リスク管理について理解していたのか、私は、はなはだ疑問…