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文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 27 ジョン・レノンが見た夢(その2)

ビートルズのデビューから8か月後、1963年6月7日にローリング・ストーンズが“カム・オン”で、デビューしています。2つの偉大なロック・バンドが相次いでデビューしたのは、決して偶然ではないだろうと思います。当時のイギリスには、そういう土壌というか、ロック・バンドを生み出す環境とエネルギーがあったのではないでしょうか。

ビートルズは、1963年8月23日にイギリスで“シー・ラヴズ・ユー”を発売します。もう、同国での人気は相当加熱していたことがうかがえます。そして、同年11月22日、彼らは2枚目のアルバム“ウィズ・ザ・ビートルズ”を発売します。このアルバムには、“オール・マイ・ラヴィング”とか“プリーズ・ミスター・ポストマン”などのヒット曲が収められていますが、私が注目したいのは“ティル・ゼア・ウォズ・ユー”という曲です。これはなんとなくボサノバのような、昔のムード音楽のような曲で、ボールが甘いボーカルを披露しています。しかし、ジョージ・ハリソンのギターが、なかなか凄いんです。複雑な和音進行に乗せてジャズっぽいソロを取っています。

ここで、少しギターの話をさせていただきます。ギタリストには、太目の弦を好む人と、反対に細目の弦を好む人がいます。太目の弦を使うと、どうしても音が低くなる。それを規定の音に合わせるためには、弦を強く張る必要があります。従って、慣れないとすぐに指が痛くなってしまいます。では、何故そのような弦を好むのかと言うと、それは張りのあるいい音がするからなのです。一般に、ジャズ・ギターではこのタイプの弦を使います。そして、私の推測ですが、ジョンやジョージはこのタイプの弦を使っていたのではないかと思うのです。

一方、ブルース系のギターでは、チョーキングというテクニックを多用します。これは、弦を抑えている指を上方に動かして、音程を上げるものです。ビブラートを掛けることもできます。このタイプの演奏をする人は、細い弦を好む。太い弦では、とてもチョーキングはできません。エリック・クラプトンなどは、この細目の弦を使っているはずです。

何故こんな話をするかと言うと、ギター・スタイルの流行は、その後、“太目の弦”から“細目の弦”へと移っていくからなんです。従って、ジョンやジョージの演奏スタイルは、次第に古臭くなってしまう。しかし、彼らのギター・テクニックが稚拙だったということは決してない。私は、そう感じています。特に、彼らのコード(和音)とコード進行に関する知識は、相当なものだったと思うのです。

一体、ジョンやジョージはどうやってあのギター・スタイルを身につけたのでしょうか。音楽学校に通っていた形跡はありませんし、誰かに教わったという話も聞きません。ただ、彼らが相当練習していたという逸話はあります。チャック・ベリーとか、モータウン・サウンドを徹底してコピーしていたのかも知れませんね。

さて、話を“ウィズ・ザ・ビートルズ”に戻しましょう。このアルバムのラスト・ナンバーでも、ジョンがシャウト唱法を披露しています。“Money”という歌で、ひたすら“金が欲しい!”という歌詞が続きます。オリジナルではありませんが、ジョンのボーカルにはぴったりの曲です。当時、ビートルズのコンサートは、ジョンが絶叫するナンバーを最後に演奏していたのでしょう。ビートルズはデビュー当時から、メロディアスなオリジナル・ナンバーに加え、卓越したコーラス、味のあるギターなどのセールス・ポイントがありましたが、ライヴで聴衆を圧倒していたのは、ジョンのボーカルだったに違いありません。