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文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 44 芸術を生み出す心のメカニズム(その2)

先日、箱根にあるポーラ美術館へ行ってきました。豊かな自然に囲まれた素晴らしい美術館でした。ゴッホの作品も2点ありましたが、緑色が基調の絵で、ちょっとがっかりしてしまいました。やはり、ゴッホは黄色がいいですね。一方、強い印象を受けたのは、ヴラマンク(1876~1958)の作品でした。私は昔から、ヴラマンクが好きなのです。その絵には、雪に埋もれたパリの街並みが描かれていました。右手にはレストランが建っている。そして、その前に一組の男女が佇んでいます。男性はレストランの方を向いていますが、女性は、画面の正面を見ています。凍えるような寒さと言いようのない孤独感が伝わってきます。さて、彼らはレストランに入ろうとしているのでしょうか。それとも、食事を終えて出てきたところでしょうか。そんなことを想像していると、色々なストーリーが脳裏をよぎります。

さて、佐伯祐三(1898~1928)という日本人画家がパリ郊外に住むヴラマンクを訪ね、自身の作品を見てもらったことがあります。その時、ヴラマンクが「何たるアカデミズム!」と言って、佐伯の作品を批判したそうです。その後、ヴラマンクは佐伯に「本能と直感で描け」と指導したそうです。まあ、微妙なニュアンスは分かりませんが、この話も前回私が提示致しました手書きの一覧表に通ずるところがあるように思います。絵を描く時には、アカデミズム、すなわち“思考”ではなく、直観で描けということだと思います。

前回の図では、“思考”“感情”の後が“直観”になっていましたが、その間に“心の課題”という項目を追加した図を添付致します。私の考えが変わったという訳ではなく、その方が分かりやすいだろうということです。

 

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人間の心は、最初に“感覚”という機能を獲得する。その後、経験を積むと共に現実に立ち向かう“思考”という機能と、種族保存行為に伴う“感情”という機能を獲得する。そのバランスは、人によって異なる。幸せな人生を送っている人は、それ以上のことはないでしょう。しかし、思い通りにならない現実や、心の闇に直面する人もいる。この心理的な困難さ、すなわち、解決することが困難な“心の課題”が生じた場合、それを修復するために無意識を含めて心の全体が働き、“直観”が生まれる。これが私の説な訳ですが、今後も検討を加えていく上で、この“心の課題”という項目は重要だと思うのです。

正直に言いますと、この“芸術を生み出す心のメカニズム”(長いので以降「芸術メカニズム」と呼ぶことにします)は、私の直観が生み出したもので、自分でも驚いています。このブログを書き進めて行くうえで、全く予定には入っていなかった考え方なのです。しかし、直観だとか融即律については、既にジョン・レノンの“ベッド・イン”を検討した際(このブログのNo. 33)に、概略を述べていましたね。ある意味、この“芸術メカニズム”という考え方は、私にとって、必然的に辿り着くべき一つの結論だったのかも知れません。