文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 49 ユングと集合的無意識(その1)

ちょっと、大変なタイトルになってしまいました。「何それ?」という感じの方もおられるかも知れませんね。しかし、このブログでは、度々、ユングとかユング派という言葉が使われてきました。また、今後、シリーズで掲載予定のテーマ(孤高の前衛、ジャクソン・ポロック)においても、ユングが出て来そうなのです。そのため、概略だけでもこのタイミングで述べておきたいと思ったのです。

カール・グスタフユング(1875~1961)は、スイス生まれの心理学者です。心理学と言えば、フロイトが有名ですね。ユングは一時期、フロイトとも親しく交流していましたが、思想的な相違から決別し、1921年にタイプ論を発表します。その後、タイプ論をベースに置きながらも「人間は集合的無意識に影響されている」との立場から、独自の心理学を確立します。ユングの心理学は、一般に分析心理学と呼ばれています。

存命中も現在も、ユング程、多くの敵を作った学者も少ないのではないでしょうか。理由はいくつかあると思います。そもそも、人間の無意識なんてものは、科学的な研究の対象にすべきではない、という意見もあるようです。しかし、ユング派の心理療法によって救われた患者の方々は無数におられる。従って、この批判は当たりません。次に、ユングがその理論を確立する上で、古代の神話や宗教を対象としたことも批判を受ける原因となったようです。この批判についても、私は反対です。古代人の心というものは、人間の心の深層を探る上で、貴重な研究対象となるはずです。

しかし、問題はそれだけではありません。ユングは晩年、「シンクロニシティ共時性)」という説を唱えたのです。文献1によれば、次のように説明されています。「二つ以上の事象がある時に同時に生じ、双方とも因果的に関連していないけれど、それらの間に明確に意味のある関係が偶然の一致の可能性を超えて存在しているとき、その状況は、共時性の根本的要素をもっている」。これ、ちょっと分かりませんよね。また、ユング自身は文献2において次のようにも述べています。「予知夢やテレパシー現象といった種類のものは全て直観です。私はこうした現象を数多く知っており、これらの現象がまさに存在することを確信しています」。

ここまで言ってしまうと、これはもう神秘主義と言うか、オカルティズムと紙一重な訳です。

私は、オカルティズムには反対の立場です。それでは、「神様のお告げがあった」と言って、理論も証拠も無視して、議論を拒絶し、ただ信じろと言うのと同じではないでしょうか。このような問題を考える場合、オカルティズムの手前で立ち止まるべきだと思うのです。よって、予知夢の通りの出来事が実際に起こるなどという説に賛成する訳にはいきません。但し、テレパシーについては、「あり得るかも知れない」と考えています。

以下に記載する事項は、しばらく前に放映された「NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦」からの受け売りです。

物体というのは、粒子状の物質によって構成されている。その最も小さなものが、量子である。量子には、電子、光子、素粒子などの種類がある。量子は壁を突き抜ける場合があるが、その確率を丁度5割にするよう壁の厚さを調節したものが、乱数発生器である。例えば、量子が壁に跳ね返された場合は0、量子が壁を突き抜けた場合は1として、0と1をランダムに発生させることができる。しかし、米国で同時多発テロが発生した時、この乱数発生器に異常が生じた。これは、人間の意識が量子に影響を与えているのではないか、とする説があった。しかし、多くの人が一斉にテレビを見たり携帯電話を使ったりしたことが原因ではないか、とする反論もあった。そこで、ある科学者がそれらの影響の少ない砂漠地帯の真ん中で開催される祭りに目を付けた。その祭りは、バーニングマンと呼ばれる巨大な人形を燃やすというものだった。実験の結果、バーニングマンに火が付けられた瞬間、7万人の観客は歓喜し、そして、乱数発生器は異常値を示したという。この結果から、やはり人間の意識が量子に影響を及ぼしている可能性があるという説が、一応は証明された。但し、その原理は明らかになっていない。

また、2つの量子を衝突させると“量子もつれ”と呼ばれる現象が発生し、以後、2つの量子をどんなに引き離しても、一方の量子に与えた刺激が他方の量子に伝わるというのである。そして、この“量子もつれ”という現象が、テレパシーを可能にしている可能性がある。

いかがでしょうか? 文科系の私としては、これ以上の説明はできませんが、最先端の科学者が言っておられるのだから、多分、そうなのだろうと思う次第です。しかしこれは、オカルティズムではありません。純然たる科学なのです。

(参考文献)
文献1: ユング共時性/イラ・プロゴフ著/創元社
文献2: 分析心理学/ユングみすず書房