文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 52 孤高の前衛 ージャクソン・ポロックー(その1)

今から20年以上前のことだったと記憶しているのですが、年上の技術者と2人でアメリカに出張した時のことです。仕事を終えての帰り道、トランジットでニューヨークに一泊することになったのです。自由時間は数時間しかありません。また、夜には技術者の旧友と食事をする約束もありました。初めての場所で、少しウキウキする気持ちもあり、とりあえず私たちは街中を歩き回りました。そしてホテルの近くに美術館を発見したのです。なんとそこは世界的にも有名なニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York)だったのです。まったくもって、ラッキーでした。私たちは、出口で待ち合わせることにして、早速、それぞれのペースで見て回ることにしました。そして、ある巨大な絵画の前で、私の足は止まってしまったのです。衝撃だったと言って、過言ではありません。金縛りにでも掛かったように、体が動かなくなってしまった。キャンバスの中を視線がグルグルと回り始める。何かの物語のようにも感じるのですが、どこが最初でどこが終着点なのか、まったく分からない。そして、私は思ったのです。ああ、この絵の中には宇宙と生命の真実があるのだ、と。それが、ジャクソン・ポロックの描いた“One”という作品だったのです。

 

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私は1分1秒でも長く、この絵の前に立っていたいと思いました。しかし、約束の時間は刻々と迫ってきます。私は拳を握り締め、体をブルブルと震わせながら、そこから立ち去りました。他の作品は全く見ずに、小走りで出口へ向かったのです。それでも20分程度の遅刻となってしまいました。私はひたすら技術者に謝罪しました。幸い、彼は笑って許してくれましたが・・・。その時点で、私はポロックの名前を知りませんでした。何かの手掛かりになればという藁をも掴む思いで、美術館のカタログのような雑誌を購入しました。

 

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ポロックの作品、いかがでしょうか。何かを感じる人もいれば、もちろん、そうでない人もおられることと思います。ただ私は、あの時に感じた衝撃は何だったのか、そこに芸術の本質があるのではないかと思うのです。そして、あのような絵を描いたポロックという人間と、向き合ってみたい。一体、どんな男で、どんな人生を送ったのか。そうすることは、私にとって、人生の宿題のような気がしてならないのです。