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文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 66 ジミ・ヘンドリックス/バンド・オブ・ジプシーズ(その3)

奇跡的と言っても過言ではない即興演奏を披露したジミとそのバンドは、その直後、1970年1月28日、今度はマジソン・スクエアー・ガーデンでコンサートを開きます。しかし、2回目の軌跡は起こりませんでした。ジミの身体的なコンディションは、最悪だったそうです。直前に粗悪なドラッグを服用したに違いない、と証言する人もいます。とてもギターを弾ける状態ではなかった。そして、ステージ上でジミは、こともあろうにバンドのメンバーの悪口を言い始めたそうです。批判の矛先は、特にドラムのバディ・マイルスに向けられたようです。そして曲の途中で、ギターの弦が切れてしまう。「俺たちは、もうこれ以上、一緒に演奏をすることはできない」。ジミはそう言って、ステージを降りてしまった。なんともあっけない幕切れでした。

バンド・オブ・ジプシーズの解散理由については、ジミとバディ・マイルスのバンド内における主導権争いだった、とする説に信憑性があるようです。メジャー・デビューを果たしてからのジミの音楽活動は、わずか4年に過ぎませんが、そのキャリアを通じて、ジミと対立するだけの強固な音楽的才能を持っていたのは、バディ・マイルスだけだった。バンド・オブ・ジプシーズの音楽的な成功には、この2人の才能のぶつかり合いが必要だったのだろうと思います。それは、ジョンとポールの個性がぶつかりあって、後期のビートルズが傑作を生み出したのと良く似ています。

ジミの次のバンドには、ベースのビリー・コックスが居残り、ドラムにはイギリスからミッチ・ミッチェルが呼び戻されます。そして、このバンドは再びエクスペリエンスと名乗ります。また、このバンドは1970年5月30日にカリフォルニア州バークレーでコンサートを開いており、その時の演奏はCDなどで聞くことができます。この時の演奏は、相当、いいんです。例の“マシンガン”も演奏しています。かなりの出来なんですが、比較すると、私としてはバンド・オブ・ジプシーズに軍配を挙げたくなります。また、同年8月にはイギリスのワイト島で開催されたフェスティバルにも参加しています。この時の演奏も相当いいんです。いいんですが、スタジオでレコーディングされた曲を3人のメンバーで演奏しており、ちょっと楽器の数が足りない。本来であれば、リズム・ギターを加えるべきだったように思います。

1970年9月18日、ジミはロンドンのホテルで急逝してしまいます。原因については、自殺説、マフィアによる暗殺説などもありますが、単なるドラッグのやり過ぎだったのではないでしょうか。モニカという美しい女性と一緒だったそうです。享年27歳。

ところで、ジミとマイルス・デイビス(1926~1991)に関するエピソードを紹介致しましょう。ただ、どの文献に書いてあったのか記憶がないため、半分、私の想像だと思ってください。ちなみにマイルス・デイビスとは、ジャズの歴史を創造し、かつジャズの枠組みを超えて活動した黒人のトランぺッターです。

即興演奏を理論的に追及していたマイルスですが、ジミの演奏に心酔していました。なんとか、ジミを自分のバンドに入れたい。少なくとも、一緒にプレイしたいと切に願っていたのです。そのため、マイルスはジミを自宅に招き入れます。そこで、一緒に時間を過ごす訳ですが、なんとジミはマイルスの奥さんに手を出してしまう。マイルスも当然、そのことに気づくのですが、黙認したようです。そして、リビングのテーブルの真ん中に、ある楽譜を置いて、ジミと奥さんの2人を残し、マイルスは自宅を出ます。その楽譜には、マイルスがジミと共演するためのアイディアが記されていたのです。しかし、ジミは楽譜が読めなかったので、マイルスの願いはかなわなかった。この時のマイルスの奥さんですが、マイルスの“ソーサラー”というアルバムのジャケットに写真が載っている人だったと記憶しています。なんという尻軽女でしょうか。マイルスがその後、離婚したことは言うまでもありません。

ジミの女性関係についてのエピソードをもう一つ。「宗教を生みだす本能」(文献1)から引用します。「ミラーは、音楽の能力は脳の健康状態を如実に表していると指摘する。そこで多くの女性は、わが子の父親として音楽の才能のある男性を好み、音楽の才能を発現させる遺伝子が広まった。ロック・ギタリストのジミ・ヘンドリックスは“何百人というグルーピーと性関係を持ち、同時にふたり以上の女性と長期間にわたって交際し、知られているだけでアメリカとドイツとスウェーデンに三人の子供がいる”」。

こうしてみると、ジミ・ヘンドリックスとは、人類史上稀に見る偉大なシャーマンだったのではないか、と思えてきます。(シャーマニズムについては、このブログのNo. 18)音楽の才能に長けて、努力もした。ある時は、スタジオに18時間もこもったそうです。また、楽譜が読めなかったからこそ、理論や音階に頼らず、自由な演奏ができたのではないでしょうか。そして、ジミがトランス状態に入ることをドラッグが助けたことには、疑いの余地がありません。ジミが異常な程、女性にモテたのは、単に彼がミュージシャンでカッコ良かったからではないと思うのです。そういうミュージシャンは他にもいます。それだけではなく、シャーマンとしてのジミの非凡な才能が、女性を惹きつけたに違いありません。意識を低下させ、トランス状態に入り、非現実的な空間を作り出す。それこそがシャーマニズムの本質で、そこに女性たちの本能が呼応した。そう考えた方が、自然だと思うのです。

(参考文献)
文献1: 宗教を生み出す本能/ジェームス・D・ワトソン/NTT出版

 

※ 都合により、1週間程度、ブログの更新を休みます。