文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 93 朝鮮半島情勢とリスクマネジメント

落ち着かない週末を過ごされている方も、少なくないのではないかと思います。

さて、表題の件ですが、深刻な問題ですので、今回は失敗しないよう慎重に記載したいと思います。なお、私は多くの皆様と同様、何らかの内部情報などを持っている訳ではなく、情報源はテレビ、新聞、ネットなどによって既に公表されているものに限定されますので、その点、予めご了承ください。

まず、本日(15日)現在の状況を簡単にまとめてみましょう。

北朝鮮は予定通り軍事パレードを実施しましたが、そこで開示されたミサイルが新型のICBMではないか、との推定がなされています。また、核実験を行う準備はほぼ完了しているようですが、新型ICBMの発射実験は、技術的な問題があり、実施段階になさそうです。北朝鮮の高官は、相変わらず強気の発言を続けています。

一方米軍は、原子力空母カールビンソンが、朝鮮半島近海に、本日、到着予定となっています。横須賀港に停泊中の空母ロナルドレーガンは、メンテナンス中で出航できないようですが、替わって二ミッツという空母が、朝鮮半島沖を目指して、航海中とのこと。在日米軍も臨戦態勢になっているようです。米軍基地周辺に在住の方々から、いつになく飛行機の発着頻度が高まっている、というネットへの書き込みがあります。

 

以上が、公開されている情報の概略ですが、ここから先は私の個人的なコメントを記載させていただきます。

まず。テレビ、新聞の報道状況ですが、概ね楽観的だと言えます。上に記した事項からすれば、事態は相当緊迫していると思うのですが、何故、楽観視できるのか、その理由が私には分からないのです。Yahooニュースへの書き込みを見ていますと、私と同じように感じている人たちが決して少なくないことがわかり、ちょっと安心した次第です。水や食料を買いだめした人とか、いやいやローソクも買っておいた方がいいとか、車のガソリンを満タンにしておいたという人までおられるようです。私はそこまでの準備はしていませんが、少なくともこの時期にソウルへ観光旅行に出掛けるというのは、ちょっと信じられません。確かに、過去には国民がパニックになり、トイレットペーパーの買いだめに走ったという例もあります。しかし、福島第一原発の事故の際、政府も東電メルトダウン炉心溶融)はないと言い張っていましたね。そして、危機的状況が過ぎ去ると、実はメルトダウンしていたと認めたのではなかったでしょうか。

本件で言えば、日本政府とその関係者は、米国の作戦について、その内部情報を知っている。それを漏らす訳にはいかない。そういう事情があることは分かります。メディアに登場するコメンテーターも、一部、内部情報に接しているものと推定されます。しかし、「こうあって欲しい」という情緒的な願望と、「こうなるのではないか」という客観的な事実認定が、混同されているということはないでしょうか? リスクマネジメントの観点から言えば、それはあってはならないことのはずです。ひと度、有事となれば、ノドンミサイルの数発位は、日本国内に着弾する可能性は十分にあるのではないでしょうか。「平和ボケ」という言葉がよく使われますが、そのような心理状態を脱却するためには、事実を直視すること、情緒に流されないことが必要であって、そのためのスキルが、リスクマネジメントだと思うのです。あるテレビ番組で「今は中国の説得に期待する」とコメンテーターが異口同音に述べていました。私も、それを期待しています。しかし、では、中国に何ができるのか、客観的に分析すべきだと思うのですが、論議はそこまで進まない。中国が北朝鮮を説得して、戦争を回避して欲しいといのは情緒的な願望に過ぎない。では、具体的な方法があるのか、ということまで考えなければ、リスクを評価することはできないと思うのです。ちなみに、中国にできるのは、石炭の輸入停止、石油の供給停止などの経済的な制裁に限定されているようです。金正恩を中国に亡命させるという選択肢も理論的にはあり得ますが、金正恩は中国の特使と会うつもりはなさそうです。

次に、米国の対応ですが、リスクマネジメントが徹底されているように感じます。2~3日前、ある高官がこう発言していました。「目標は、朝鮮半島の非核化である」。たったこの一言に、沢山の意味が込められていると思うのです。1つには、北朝鮮の体制変更が目的ではない、ということ。すなわち、北朝鮮を潰して韓国に併合するとなれば、それは中国にとって大変な政治的損失となる。そんなことは考えていない、中国と戦うつもりはない、というメッセージ。2つ目には、北朝鮮と言わず、朝鮮半島という言葉を使っている。これは、北の問題さえ解決できれば、韓国を核武装させるつもりはない、ということだと思うのです。3つ目には、行動する前の段階で、目標を明確に設定しているということ。最近のリスクマネジメントの理論では、最初に目標を設定するんです。そして、目標達成の阻害要因をリスクとして特定し、個々のリスクに対処していくんですね。そういうことを米国は、やっていると思います。この話は、別の機会にもう少し述べてみたいと思います。

 

少し長くなりましたが、最後に、本件のトリガー(引き金)について述べたいと思います。北朝鮮は、核実験を行う準備をほぼ、完了している。北朝鮮がこれを行えば、米国が攻撃を開始することになると思われます。このリスクは、既に、現実のものとなっています。一方、米国ですが、昨日辺りから、「北朝鮮が核実験を行うことが確実視される場合には、先制攻撃をする可能性がある」と述べています。(その後、この点を否定したという報道もあるようです。)そうしてみると、仮に、北朝鮮が核実験を行わなかった場合でも、米国が行いそうだと認定しさえすれば、先制攻撃に踏み切る可能性がある、ということではないでしょうか。米国は、「イラク大量破壊兵器を持っている」と主張してい、イラク戦争を始めました。(結局、イラクは持っていなかったのですが) また、数日前には、「シリアが化学兵器をし使用した」と言って、同国にミサイルを打ち込んだ。シリアが本当に化学兵器を使用したのか否か、私には分かりませんが、同国はかかる事実を否認しているようです。そうしてみると、既に5回の核実験を行っている北朝鮮が「6回目の核実験の実施に着手した」と米国が主張すれば、文句を言う国はないように思います。米国がそのようなことをするかどうかは分かりませんが、現時点で、北朝鮮に対し、米国が「いつでも攻撃できる」というフリーハンドを確保しているのは間違いなさそうです。なお、あくまでも推測ではありますが、米国は現時点で、中国に対応の時間的猶予を与えているような気がします。また、現在、北朝鮮には100名程度の海外メディアの関係者が滞在しており、彼ら巻き込みたくないという事情もあろうかと思います。従って、米国が攻撃を仕掛けるとしても、その時期は、メディア関係者の出国後ではないでしょうか。彼らが人質として、北朝鮮に拘束されないことを切に願っております。