文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 110 遊びとは何か(その10)/ネットが育む現代の遊び

夢に破れ、孤独に向き合っていた近代の人たち。しかし、そんな時期でも、庶民とその子供たちは遊ぶことを止めなかった。野球盤ゲームだとか、ルービックキューブだとか、子供たちは少しでも楽しそうなものを探していたんだろうと思うのです。大人たちも、芸能人が作り出すテレビの世界には、次第に飽きてきた。他人のすることを見るよりも、自分でやった方が楽しいに違いない。そこで、カラオケなるものが登場します。これが爆発的に普及したんですね。ここら辺から、現代のアマチュアリズムに立脚した大衆文化が台頭したのではないでしょうか。遊びは、一部の芸能人が作り出すものではなく、素人が参加して楽しむものに変わって行った。

 

遊びも多様化、細分化が進みました。若者たちは新しい遊びを求めて、秋葉原などに集まり始める。そこで、オタク文化というようなものが出てくる。その代表例は、AKB48ではないでしょうか。いつもテレビに出ているが、ほとんど会うことのできない芸能人ではなく、“会いに行けるアイドル”をキャッチフレーズとして、このグループが登場した訳ですが、これは現代の遊びを考える上で、象徴的な出来事だったように思います。AKB48というのは、アイドルでありながら、参加型の遊びだと思うのです。秋葉原に比較的小さな劇場があって、そこで毎週、コンサートが開催されているのだと思います。握手会というのがあって、コンサートの前後に、自分の好きなメンバーと握手ができる。総選挙というのもあって、ファンが投票して、メンバーの順位づけを行う。このように、ファンが参加するエンターテインメントというものが成立したんですね。

 

多様化、細分化という意味では、同様のことがプロレスの世界でも起こったんです。力道山日本プロレスを立ち上げたのですが、そこにいたアントニオ猪木新日本プロレスを設立する。そして、ジャイアント馬場全日本プロレスを立ち上げました。当時のプロレス団体というのは、この2つ位だったのではないでしょうか。しかし、男がやるなら女だってできるということで、全日本女子プロレスという団体が発足します。この団体は、ビューティーペアとか、クラッシュギャルズというスターを生み出し、一斉を風靡しました。試合の前に選手が歌い、若い女性ファンが熱狂したんですね。更に、男子の世界では、ジャイアント馬場の付き人をしていた大仁田厚が、FMWという団体を旗揚げしました。電流爆破デスマッチを行い、川崎球場を満員にしたこともあります。メジャー団体との反対概念で、インディー団体というものがありますが、このインディーというのはFMWが最初だったのではないでしょうか。メジャー団体の楽しみは、迫力であったり、華やかさであったりする訳ですが、インディーの魅力は「あまり世間には知れ渡っていないけれども、自分は知っている」というマニアックな喜びがあったりする訳です。現在、日本にいくつ位のプロレス団体があるのか分かりませんが、女子だけでも15団体はあるようです。今は、会いに行けるプロレスラーが沢山いるんです。試合の前後には、握手会、サイン会、グッズの販売、記念撮影などがあり、このような営業スタイルは、AKB48よりもプロレスの方が先だったのだろうと思います。

 

時代は進み、SNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)なるものが登場する。その影響は、もうプロレスどころの騒ぎじゃありません。ネットを通じて、誰もが公に情報を発信できる時代になった。そこから発信される情報の種類というのは、千差万別ではないでしょうか。そして、SNSが可能とするコミュニケーションというのは、過去には見られなかった新しい遊びの一種だと言えるように思います。

 

かつて、どこかの誰かがビー玉を眺めながら、これで何か楽しいことはできないだろうかと思案した。現代人は今、インターネットという未知なるものと出会い、同じように思案しているのではないでしょうか。これで、何か遊べないだろうかと。そして、You Tubeが登場し、世界中の人々が、何か楽しいことを見つけようとしている。今は、そんな時代だと思うのです。