文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 138 集団スケールと政治の現在(その11)

(集団スケール一覧)
1. 個人
2. 血縁集団
3. 帰属集団・・・顔と名前が一致する範囲
4. 組織集団・・・職業別団体、宗教団体、集票ターゲット
5. 民族・・・天皇制、宗教国家
6. 一神教イデオロギー・・・キリスト教イスラム教、共産主義
7. 民主国家・・・日本国憲法、自由、平等、共存しようとする意志
8. グローバリズム・・・国連、国際協定

このように考えてきますと、純粋な右翼の方々が尊重しているのは、5番の“民族”という位相であり、他方、私が尊重している価値観というのは、7番の“民主国家”にあることが分かります。

また、アメリカの軍事攻撃によってイラクという国家を破壊された人々が、イスラム国という国家ではない宗教団体に回帰していったことも頷けます。

さて、今回の原稿で、私の考える集団スケールの一覧は、全て網羅することになります。

歴史的時間の経過と共に、集団のスケールを拡大し続けてきた人類ですが、いつか国家という単位では解決できない問題に直面します。まず、不幸なことに戦争のスケールまで拡大してしまったということがある。戦争までが、世界的な規模になってしまった。第1次世界大戦があって、その反省から1920年国際連盟が設立されました。それでも第2次世界大戦が勃発し、終戦の年、1945年に国際連合が設立されたのです。

そして、地球温暖化の問題が生じます。この問題に対処するため、2015年にパリ協定が締結されます。

更に、核兵器の問題がある。核兵器というのは、素人の私などが考えるより、簡単に作れるものなのでしょうか? これを保有する国は増える一方で、どうやら北朝鮮までもが手にしたようです。もう、危なくって仕方がない。どこかの地域紛争で核兵器が使用され、その紛争が拡大した場合には、もう地球の環境は人類が住めない程に破壊されてしまうのではないでしょうか。これは流石にマズイということで、2017年7月7日に核兵器禁止条約が締結されます。しかし、残念ながらアメリカの顔色を窺っている日本は、この条約を批准しませんでした。世界で唯一の被爆国である日本には、日本にしか果たせない役割があるはずなのに、それを放棄してしまった。

さて、国家を超えるスケールの集団ということを考えますと、EUの試みがある。イギリスは脱退するようですが・・・。

長い目で見ますと、人類は、国家を超えるスケールの集団を作る方向に向かっていると言えます。最終的には、地球規模ということになるのでしょう。“世界統一政府”などと言う人もいるようですが、地球規模での集団を構成するための第一歩は、共通のルールを作るところから始まるのだろうと思います。この流れは、止まらない。そして、止めてはいけないと思うのです。そうしなければ解決できない問題に、既に人類は直面している。これはもう、明白な事実です。

トランプ大統領が“アメリカ・ファースト”などと言っていますが、これは歴史の流れに逆行するものです。ただ、グローバル規模での統一ルールの作成が、簡単でないことも事実です。そうしてみると、現在の世界の政治状況というのは、国家という集団スケールから、地球規模での集団スケールに移行する途上にあると言えます。

地球規模での集団スケールということを考えますと、私は、ジョン・レノンのイマジンを思い出します。 Imagine there is no country ・・・。