文化で遊ぶ

(旧タイトル:文化の誕生)

No. 144 対米従属と憲法9条(その2)

 

対米従属がもたらす問題点は、以下の3点ではないでしょうか。

 

第1に、立憲主義の破壊という問題があります。安全保障関連法が国会で決議される際、参考人として出席した憲法学者長谷部恭男氏、小林節氏などは明確に違憲である旨、証言しております。すなわち、アメリカに追従するため、憲法違反である可能性が極めて高い集団的自衛権が、立法化されてしまった。これでは、立憲主義が破壊されている。そんな法律は本来認められない訳で、最高裁判所に訴えれば良いはずだと思います。実際、最高裁違憲立法審査権という権限を持っていて、憲法違反の法律を無効にすることができるはずなんです。しかし現実問題として、日本の最高裁は高度に政治的な影響力を持つ事例については、判断を避けてきた。そこで、それでは本来の憲法判断を下す裁判所として、“憲法裁判所”を設置すべきではないか、という議論が起こっているようです。これは、是非、設置すべきだと思います。

 

さて、対米従属がもたらす第2の問題は、本当にそれで日本人の安全が守られるのか、ということです。仮に自衛隊がホルムズ海峡まで行って、米軍を助けた場合、高い確率で日本はその戦争に巻き込まれてしまいます。地球の反対側では、イスラエルパレスチナキリスト教イスラム教 など、歴史的な宗教戦争が継続している。元来、神道仏教の国である日本が、そのような戦争に参加すべきではない、というのが私の持論です。最悪、日本国内でテロが発生しないとも限りません。また、世界情勢を俯瞰してみますと、米国の衰退と中国の台頭という傾向が見て取れます。素直に考えた場合、中国が台頭して来るのであれば、今から中国と仲良くしておいた方が良いのではないか。加えて、日米地位協定という治外法権の問題があります。先日も沖縄でヘリコプターが墜落しましたが、日本側は現場検証にも立ち会うことができません。放射性物質が拡散されているのではないかという報道もあったようですが、真実は分かりません。

 

対米従属がもたらす第3の問題は、日本の文化が進化を止めて停滞しているということです。安全保障という政治上、最大の課題について、日本は自ら決定することができない。安倍総理集団的自衛権について、これを認めるようアメリカから要請を受けていたと田原総一朗氏に述べていた、との報道がありました。そんなことを今さら暴露する田原氏もどうかとは思いますが、多分、これは事実なのでしょう。安倍総理は日本の国会で審議する前に、集団的自衛権に関する法律を日本の国会で可決すると、アメリカの議会で演説をしていたのではないでしょうか。すなわち、対米従属と自民党政権というものが相まって、日本人の中には「何を言ってもダメだ」という無力感、虚無感が蔓延している。ただでさえ、帰属集団から疎外されている人たちが、政治からも疎外されている。だから、選挙の投票率も上がらないのだろうと思います。疎外された人たちというのは、「昭和の暴走族」のように反社会的な集団を作りやすい。

 

では、どうすれば日本はアメリカから独立できるのでしょうか。この問題について、いくつかの考え方をご紹介致します。

 

まず、社会学者の宮台真司氏。宮台氏の意見としては、憲法9条を改正して、集団的自衛権を正面から容認し、重武装中立を目指すというものです。日本の軍隊を強化して、米軍基地に派遣する。そして、米国と新たな地位協定を締結する。その際、治外法権である現行の地位協定の条件を提示し、これをテコにして、最終的には現行の地位協定を公平なものに変更させる、というアイディアです。実際、他国はこの方法でアメリカと折衝し、地位協定の改正に成功している、と宮台氏は説明しています。

 

沖縄の現状を考えれば、このアイディアにも一理あるような気はしますが、先に述べました通り、日本が宗教戦争に巻き込まれるリスクが発生してしまいます。よって、私としては賛成できません。

 

次に、法哲学者の井上達夫氏。井上氏は、憲法について9条削除論と呼ばれる独自の案を提示していますが、その中で、徴兵制について言及しています。徴兵制を敷けば、国民は必然的に政治に興味を持たざるを得ない。そして自らが、若しくは自分の近しい者が戦地に派遣されるリスクを負うようになれば、戦争に関して必ず慎重になる。だから、徴兵制を敷くのが良い、という意見です。

 

確かにそこまですれば、アメリカから独立できそうです。しかし、徴兵制というのは、なかなか難しい仕組みであって、国民を分断する新たな契機となりかねない。まず、年齢。徴兵される可能性の低い60代の人間が主張しても、現実のリスクを負担する若い人が納得できるのか、という問題があります。また、男女の問題もある。確かフィンランドだったように記憶しているのですが、同国の徴兵制は、女性をも対象としている。非力な女性にまで、銃を持たせるのが良いのか。そんな制度を作って、男たちの心は痛まないのか、と思います。一方、韓国の徴兵制は、男だけを対象としていますが、それでは「徴兵に応じる男の方が偉いんだ」という男尊女卑の価値観に結びつきかねない、ということで論議になっているようです。ここで、徴兵制に反対する憲法学者、長谷部氏の意見を紹介致します。(文献1)

 

「軍事技術が高度化した現代社会では、一般市民を訓練して軍事行動に参加させること自体が、非現実的ではないかとの疑問を突き付けられることになるでしょう。」

 

どうやら、重武装中立も、徴兵制も、得策ではなさそうです。

 

(参考文献)
文献1: 「この国のかたち」を考える/岩波書店長谷部恭男/2014