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(旧タイトル:文化の誕生)

No. 146 対米従属と憲法9条(その4)

未だに護憲派改憲派か、などという不毛な報道が繰り返されていますが、言うまでもなく、憲法改正に賛成と言っても、どの条文をどう変更するのかによって、その意味は全く異なります。そして緊急性があるかという問題は別にして、憲法問題の本丸は9条にあります。今回は、各政党のスタンスなどを中心に、憲法9条について考えてみることに致します。

 

1. 非武装中立・・・・・・・・・・・・・憲法9条2項/共産、社民
2. 武装中立・・・・・・・・・・・・・・安倍改憲
3. 個別的自衛権・・・・・・・・・・・・専守防衛
4. 日本の周辺でのみ米軍を防護する・・・維新、旧民進、(立憲)
5. 世界中で米軍を防護する・・・・・・・集団的自衛権違憲/自民、公明

 

では、順に見ていきましょう。まず、1番の非武装中立ですが、これは軍隊を持たない、交戦権も放棄するという考え方で、憲法9条2項に明記されている考え方です。この条文を変更すべきではない、と主張しているのは共産党です。社民党は、若干曖昧なところもありますが、福島瑞穂氏などは「9条を守れ」と盛んに言っておりますので、一応、共産党と同じ主張であろうかと思われます。主張の根幹は、憲法9条というのは、日本が目指すべき目標であって、9条があるから戦後72年間、日本は戦争に巻き込まれることなく平和に暮らすことができた、という点にあろうかと思われます。実際、かつての日本はアメリカからの圧力に対し「お金は出せるけれども、憲法9条があるので自衛隊は派遣できない」と言って、海外派兵を拒否してきた経緯もあります。では、仮に日本が外国から軍事攻撃を受けた場合はどうするのか、という疑問が沸いて来ます。この点、共産党の志位委員長は、「攻撃を受けないように、対話によって問題を解決する」と説明しています。しかし、設問としては「対話によっては解決できず、日本が攻撃を受けた場合にどうするのか」という点にある訳で、共産党はこの問いに対して、明確には答えていないようです。現実問題としては、3番の個別的自衛権までは認めざるを得ないものと思われます。

 

次に2番の「武装中立」ですが、安倍総理が主張している改憲案がこれに当たります。9条に3項を設け、自衛隊の存在は合憲であることを明確にするという案です。「災害救助など自衛隊の人たちには、本当に頭が下がる。この程度であれば、安倍総理が言うように9条を改正してもいいかな」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、この案には2つの問題があります。第1には、9条2項との関係です。9条2項には明確に非武装中立、すなわち軍隊を持たない、と書いている訳で、この条文を残したまま、自衛隊を軍隊としてどう認めることができるのか。自民党は、未だに具体的な改憲案を示していませんが、それが公開された時点で、注意深くチェックしてみる必要があります。第2の問題点は、法律上のちょっとテクニカルな問題です。これは、「後からできた法律などが優先される」という法律解釈に関する問題です。既に日本には、5番の「世界中で米軍を防護する」という法律が存在しています。これは、憲法違反の法律です。しかし、この法律が現存するまま、安倍総理が主張するような憲法改正を行いますと、5番の憲法違反の法律を追認してしまうことになる、という問題があるのです。

 

次に、3番の個別的自衛権ですが、これはあくまでも日本が武力攻撃を受けた場合に反撃できるという考え方で、政府見解、学説(長谷部恭男氏、小林節氏 他)共にこれを合憲であると認めています。前述の通り、現実問題としては、共産党社民党もこれに異論はないものと思われます。

 

4番の「日本の周辺でのみ米軍を防護する」という考え方ですが、これは個別的自衛権集団的自衛権の中間に位置するような考え方だと思われます。元来、アメリカは日米安保条約に基づき、日本が第三国から攻撃を受けた場合、日本を防護する義務を負っています。これは、アメリカにとっては集団的自衛権ですね。アメリカは、日本を守ってくれる。仮に、北朝鮮が日本を攻撃しようとする。アメリカの艦隊が日本海にやって来る。アメリカは明らかに日本を防護しようとしている。その時、自衛隊の目前でアメリカ軍が攻撃を受けたとします。自衛隊は、アメリカ軍を助けるべきか否か。こういう問題だと思います。私は、自衛隊はアメリカ軍を助けるべきだと思います。何しろ、アメリカ軍は日本のために戦っているのですから。また、結果としてアメリカ軍を助ける行為は、日本の防衛にもつながります。では、“日本の周辺”と言わずに“日本を防護しようとしている米軍”と言えば良さそうなものですが、法律的にはその米軍が何を目的にその場所にいたのか、判断するのが難しい。たまたまそこにいたのか、日本を助けようと思ってそこにいたのか、これを証明することは困難ですし、そもそも上の例で自衛隊が米軍を助けようか否か判断すべきその一瞬に、米軍の意図を確認することなど不可能です。よって、より判別のつきやすい“場所”、すなわち“日本の周辺”という条件を設定しているものと思われます。

 

日本の周辺であれば、米軍を防護する。そこまではいいだろう、そこまでなら集団的自衛権と言わずとも、日本の個別的自衛権の範囲内にあると考えることができる。このように考えている政党、政治家は少なくありません。例えば、安全保障関連法を審議した際、維新の会はこの考え方を採用し、対案を提出しました。その際、維新の会が相談した憲法学者は、日本周辺に限るのであれば違憲ではない、との意見だったようです。民進党の前原氏、希望の党の細野氏なども、実はこの考え方を採用しているようです。(但し、小池百合子氏の考え方は不明であり、希望の党としてどのような立場をとるのか、現時点で推し量ることは困難です。)

 

最後に5番の「世界中で米軍を防護する」という考え方ですが、既に日本はこの考え方を法制化してしまいました。安全保障関連法です。これは、当時、安倍総理が言っていたようにホルムズ海峡(地球の裏側)においてまで、米軍を防護するというものです。これでは、危なくって仕方がありませんが、この考え方を採用しているのは、与党の自民党公明党ということになります。

 

マスコミの報道は、4番と5番を一緒にして、一言で“集団的自衛権”と表現するケースが多いように思いますが、その内容は上記のように2つに分けて論じるべきです。

 

ところで、立憲民主党の立場はどうなっているでしょうか。まず、前述のように安倍改憲を支持してしまうと、一気に5番の地球の裏側まで行ってアメリカ軍を助けるという集団的自衛権まで認めることになってしまうので、これには反対である。また、政治を行う上で、憲法改正の優先順位は高くない。(保育士、介護士の給与改善、派遣の労働者を正規従業員に登用させるための法改正などの方が優先順位が高い、という意味かと思われます。)但し、4番の日本の周辺に限定して米軍を防護するというところまでは、これを憲法に定めるという選択肢もある。このような立ち位置にあるようです。

 

最近、“野党は共闘すべきだ”と市民団体が主張しており、それには一定の理解もできますが、あくまでも1番の非武装中立固執している共産党社民党と、現実的に4番まで考えている立憲民主党とでは、共闘は難しいものと思われます。