文化領域論

(No.196 ~ No.228)

No. 158 文化進化論とは何か(その1)

前回の更新から少し間があいてしまいました。その間、私が何をしていたかと言いますと、片手にマーカーを握りしめ、例の文献を読んでいたのです。まだ、半分位しか読み終わっていないのですが・・・。例の文献とは、すなわち「文化進化論」というタイトルの本のことです。詳細は末尾に記載。以下、本文献と呼ぶことにします。まず、本文献の基本的なスタンスについて、まとめてみましょう。

 

1 生物学は様々な生物を研究しているが、その根底にはダーウィニズムとその後の遺伝子の研究成果という共通の基盤がある。よって、例えば鳥類の専門家と昆虫の専門家が意見を交わすことが可能となっている。もう少し広い視点で見れば、前世紀において、自然科学と物理学は格段の進歩を遂げたにも関わらず、社会科学の方は、文化の変化について語る統一的な理論を提供するに至っていない。

 

2 現在、社会科学においては、マクロレベルの分野とミクロレベルの分野に分断されていて、互いに連携していない。

マクロ・・・マクロ経済学、マクロ社会学歴史学文化人類学、考古学

ミクロ・・・ミクロ経済学、ミクロ社会学、心理言語学神経科学、心理学

 

3 本文献においては「文化とは、模倣、教育、言語といった社会的な伝達機構を介して他者から取得する情報である」と定義する。このように考えた場合、若干の例外はあるものの、文化の進化は原則的にダーウィニズムによって、説明可能である。

 

4 ダーウィニズムに立脚した文化進化論を確立することにより、社会科学の分野で、学術的な統合を図るべきである。

 

少し、私の印象を述べさせていただきます。本文献も指摘しているように、文化とは、私たちの考え方や行動に強い影響力を持っています。よって、そのカラクリが分かれば、私たちは新たな視点で歴史を振り返ることができたり、今後、文化がどのように進化していくのか、見通しを立てることが可能となるかも知れません。しかしながら、前回の原稿にも記しましたが、文化自体を研究対象とする学問は、現在、存在していないようです。本文献によれば、「文化とは曖昧なもので、学術研究の対象としてはそぐわない」と考えられてきたのが、その理由のようです。

 

文化系の私が言うのも恐縮ですが、既に遺伝子の研究も進んでおり、人間の脳の中でどのような信号がやり取りされているのかも、次第に分かって来ているのだろうと思います。これらの遺伝子や信号というのは、記号の一種なのではないでしょうか。そして、文化を構成している最小の単位も記号なのかも知れません。そうしてみると、ダーウィニズムと文化進化の間に、共通点や類時点があると想定することには、根拠があるように思います。

 

驚いたことに、生物進化と文化進化の関係については、既にダーウィンが指摘していたそうです。ダーウィンは、次のように述べたそうです。

 

好まれる言葉が生存競争を経て生き残っていくというのは、自然選択である。

 

(本文献)

文化進化論/ダーウィン進化論は文化を説明できるか/アレックス・メスーディ/NTT出版/2016