文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 186 ライオンの生態から考えるエゴイズムの3類型(その3)

昨日の佐川氏の国会証人喚問ですが、重要な事項は、何一つ明かされませんでした。ある程度想定されてはいたものの、腑に落ちません。こういう理不尽なことが続いており、次第に私は人間の社会というものに嫌気が差して来ました。

 

さて、ボヤいていても仕方がありませんので、本論に入りましょう。

 

ライオンの生態について、駆け足で見て来ましたが、そこから抽出されるエゴイズムの3類型は、次の通りです。

 

1. 帰属集団のエゴ
2. 序列闘争に関する個体のエゴ
3. 遺伝子のエゴ

 

今回は、ライオンの生態に照らし、上記の各類型について検討してみます。

 

<帰属集団のエゴ>


ライオンにおける帰属集団とは、すなわちプライドと呼ばれる血縁集団を指すことになります。ボスライオンに率いられているプライドは縄張りを保有し、他の集団がこれを侵害しようとした場合には、激しい戦いが生ずることになります。このような場合、予め、互いに遠吠えをし、威嚇しあうようです。そうすることによって、無用の戦いを回避しているのでしょう。

 

また、百獣の王と呼ばれるライオンではありますが、天敵が存在するのも事実です。典型例としては、ハイエナとヒョウを挙げることができます。最近は、チーターもそのような関係にあるとする説もあるようです。ハイエナやヒョウは、ライオンのプライドの縄張り内に生息しており、獲物を奪い合う関係にあります。ライオンが苦労して獲物を倒した直後、ハイエナが集団でやって来て、それを奪うことがありますし、反対にライオンがハイエナから獲物を奪うケースもあります。そういう闘争を、多分、もう何万年も繰り返している。そこで、ライオンは、天敵であるハイエナの生息数を減らすため、ハイエナの子供を見つけると、これを噛み殺してしまうのです。食べるためではありません。ただ、殺すのです。同様のことをハイエナやヒョウも行います。つまり、互いの子供を殺し合っているのです。終わりなき怨恨の連鎖、ということだと思います。

 

更にプライドは、弱った個体を排除する。この点は、体が小さく後ろ脚を怪我した子供のライオンに対し、母ライオンが授乳を拒否した例から、推定されます。またボスライオンは、より若くて強いライオンに取って代わられる。更に私の推測が正しければ、メスライオンにおいても、世代交代のシステムが存在する可能性がある。

 

“帰属集団のエゴ”とは、個体の利益を犠牲にし、ひたすら帰属集団にとっての利益のみを追求するものだと言えるでしょう。

 

<序列闘争に関する個体のエゴ>


プライドは、一致団結して獲物を倒しますが、ひと度獲物を獲得すると、今度はその取り合いが始まります。正に「昨日の友は今日の敵」ということです。そして、獲物を食べる順番については、“序列”という暗黙のルールがある。ライオンの生態を見ておりますと、喧嘩が非常に多い。それはオスとメスの間、オス同士、メス同士、いずれの場合でも発生する。これらの喧嘩は、序列を決めるための闘争であるように思えます。私は、メス同士でマウンティングを行っている動画を見ました。これは、あるメスが他のメスの背中に乗り、「私の方が上よ」と主張している訳で、下になったメスがじっとして反抗しなければ、その序列を受け入れることを意味するようです。ボスライオンが2頭いれば、その2頭の間でも序列が決まっているのではないか。そして、兄弟姉妹の間でも、序列が決まっているのだろうと思います。

 

<遺伝子のエゴ>


ライオンは、種族の繁栄を希望しているのではありません。ひたすら、自分の遺伝子を残そうとしている。これが“遺伝子のエゴ”の正体です。新たにボスライオンに君臨した若いオスは、前任のボスライオンが残した子供を皆殺しにする。(但し、子供が既に1才を超えて、ある程度大きくなっていた場合は殺さないようです。)すると、子供を殺されたメスライオンは発情し、妊娠する。オスもメスも、ひたすら自分の遺伝子を残すために、必死なんです。リチャード・ドーキンスは、その著書「利己的な遺伝子」の中で、「生物は遺伝子を運搬するための乗り物に過ぎない」と述べているようですが、その通りなのかも知れません。

 

ところで、ライオンの生態が特殊なのかと言うと、意外とそうでもなさそうです。たまたま、ゴリラの動画を見たのですが、結構、似てるんです。ゴリラもボスゴリラを中心とした、一婦多妻制の集団を作って暮らしています。そして、若いオスのゴリラが戦いを挑み、老いたボスゴリラが敗北すると、勝利した若いゴリラは、そのグループの子供たちを皆殺しにする。ライオンとよく似ていますね。但し、ゴリラは縄張りを持ちません。この点は、ライオンと異なります。また、ライオンの平均的な寿命は、オスで10年、メスで15年程度だそうです。ゴリラの方は、30年~50年だそうです。ある程度の知性を獲得するためには、寿命の長い動物の方が有利なんだろうと思います。

 

いずれに致しましても、それでライオンは幸せなんだろうか、という疑問が沸いて来ます。オスライオンの人生(?)を考えますと、母親に守られている幼少期を除けば、落ち着く暇がありません。他のプライドと戦い、天敵と戦い、最後は若いライオンに敗北し、プライドを追放され、死んで行く。メスライオンにしても、序列争いが絶えない。折角子供を出産できても、ハイエナに殺されてしまう。場合によっては新たなボスライオンに殺されてしまう。ライオンよ、君たちは本当にそれでいいのか、と問いたくもなります。もちろん、私の声がライオンに届くことはありませんが・・・。

 

さて、ライオンの生態から、エゴイズムの3類型を抽出することができました。これらの3類型が人類にも当てはまるのか、次回はこの点を検討してみたいと思っています。私としては、「当てはまる」と思っているのです。