文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 188 人間と動物

全ての思想は、エゴイズムに疑問を投げ掛けるところから始まる。日本国憲法の3原則に照らして考えてみます。まず、平和主義。これは人間集団のエゴイズムを抑制しようとしています。次に、基本的人権の尊重。これは、国家ならびに国民の一人ひとりに対して、エゴイズムの抑制を求めている。そして、国民主権。これは、独裁者のエゴイズムを否定している。やはり、日本国憲法は素晴らしい。

 

ところで、人間も動物もエゴイズムを持っていて、その性質は本質的に同じである、というのが前回の原稿の趣旨でした。では、記号原理はどうか。動物の方は、人間ほど複雑ではないにせよ、同様の認知・行動システムを持っているのだろうと思います。例えば、子猫を観察してみると良い。彼らは大きな目をキョロキョロと動かして、身の回りの事物に注意を払っている。それは、音であったり、臭いだったりすることもあります。例えば、彼らの目前にボールを転がしてみる。子猫は必ず反応するでしょう。

 

動くもの、匂いのするもの、生きているものなどが、記号として動物の眼前に現われる訳ですが、その記号が指し示す対象というのは、食料とか自分に危害を加えそうな生物だとか、いくつかの類型に分類することが可能だと思います。

 

では、動物は心的領域論で指し示したような心の領域(1次性~3次性)を持っているでしょうか。答えは、NOだと思うのです。

 

1次性・・・動物は、他の動物を真似て歌ったり、踊ったりしない。

2次性・・・動物は、他の動物を食べるために道具を作り出したりはしない。

3次性・・・動物は、他の動物を敬ったりしない。

 

従って、動物を動かしているのは、記号原理とエゴイズムだけだということになります。言葉の定義にもよりますが、私が心的領域論で述べたような心というものを動物は持っていない。こんなことを述べますと、ペットを可愛がっておられる方の反発を招くでしょう。しかし、ペットが飼い主の指示に従ったり、飼い主に甘えてくるのは、飼い主が餌を与えてくれるからではないでしょうか。飼い主の指示に従い、飼い主との間に友好的な関係を築いた方が、そのペットの生存確率は格段に向上するはずです。

 

他方、人間には心がある。

 

動物・・・記号原理 + エゴイズム

 

人間・・・記号原理 + エゴイズム + 心の領域

 

人間と、人間の作り出す世界というのは、上記の3要素によって構成されているのではないでしょうか。例えば、物理学者であれば、世界は元素によって成り立っていると言うかも知れません。しかし、文化論の立場から言えば、上記の3要素ということになります。