文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 202 第4章: 競争系(その2)

 

“競争系”のメンタリティと、“競争系”が生み出す社会的な現象について、もう少し分解してみたいと思います。

 

3.恐怖型

 

人間は、他の動物よりも、強い恐怖心を持っていると言われています。秦の始皇帝万里の長城を作らせたのも、恐怖心に原因がありました。また、「殺さなければ、殺される」という恐怖心が、幾多の戦争を引き起こして来たことに間違いはありません。侵略戦争にしても、例えば自国が植民地にしてしまわなければイギリスに取られてしまうという恐怖心から、ヨーロッパの国々が競って世界を植民地化した歴史があります。日本も、例外ではありません。50年戦争と呼ばれる長い戦争の時代、日本人はそういうメンタリティを持っていた。すなわち、欧米諸国に取られてしまう位なら、その前に日本の植民地にしてしまおう、ということです。

 

また、人間の恐怖心は、独裁政治の原因ともなります。北朝鮮金正恩が側近や親族までも殺害してきたのは、彼の恐怖心のなせるわざです。トランプ大統領が、多くの側近を解任してきた理由も、同じではないでしょうか。確かに、この2人には共通点がある。

 

4.疎外型

 

帰属集団の中で自分が評価されない、馴染めない、若しくは排除されているように感じる。こういう現象が“疎外”です。この疎外が、競争系のメンタリティを生む場合がある。分かり易い事例として、「昭和の暴走族」を挙げることができます。

 

集団への帰属・・・彼らは、高校に通っている。

 

疎外・・・授業についていけない。校内で暴力を振るったことを理由に退学になってしまう。または、少年院に送られたりする。疎外されている理由、すなわち「勉強についていけない」ということが、彼らのコンプレックスとなる。

 

社会から隔絶した序列集団・・・彼らは、学業とは全くことなる価値体系を持つ、暴走族という小さな集団を作る。そこでは、学業に関する能力は全く評価項目とならず、暴走族という集団への帰属意識の高さ、貢献度、年次などが序列を決定する要因となる。序列に従うことで、彼らは自らが集団に受け入れられているという満足感を得る。

 

反社会的な行動・・・彼らは自らが帰属する集団に対する帰属意識の高さを証明するため、対立グループとの喧嘩などを率先して行う。

 

同様の仕組みによって、暴力団が生まれる。「オウム真理教」の事件も、同じ構造を持っているのではないかと思います。

 

集団への帰属・・・理系の大学に所属している。

 

疎外・・・学校に馴染めない。友達ができない。生きていることの意味を見いだせない“空っぽ症候群”に陥る。

 

社会から隔絶した序列集団・・・オウム教団に入る。

 

反社会的な行動・・・サリン事件

 

更に複雑な事例としては、「三島由紀夫の自決事件」があります。これも根本的には、同じ構造を持っているのではないでしょうか。

 

集団への帰属・・・日本の伝統文化に精通していた三島は、日本という国家に強い帰属意識を持っていた。

 

疎外・・・戦時中、病弱だった三島は、徴兵検査を受けるが失格となる。この肉体的なコンプレックスが、三島の心に影を落とす。多くの三島の友人らは、戦争で命を落とすが、三島は生きて終戦の日を迎える。戦後、日本国憲法に象徴される民主制が定着し始めるが、三島はそのような考え方を“堕落”だと感じる。そして、三島のメンタリティは、社会的な価値観とかけ離れていく。

 

社会から隔絶した序列集団・・・盾の会を結成する。

 

反社会的な行動・・・自衛隊、市ヶ谷駐屯地に侵入し、「天皇陛下万歳」と叫び、自害する。

 

5.依存型

 

自らのアイデンティティを帰属集団と、集団内における序列に依存するというケースは、少なくありません。「俺は一流大学に通っている」とか「私は一流企業の課長だ」という自尊心のことです。先般、財務省事務次官を務めていた福田氏のセクハラ発言が世間の耳目を集めました。これなどは、典型例だと思うのです。福田氏は、財務省という帰属集団と、事務次官という序列に依存していたのだと思います。その立場を利用して、深夜にテレビ朝日の女性記者を呼び出し、セクハラ発言を繰り返した。多分、そういう立場を利用しなければ女性に相手にされないことを福田氏も知っていたのではないか。女性に尊敬される程の人格を持っていない、女性を楽しませるだけの話術もない。

 

高齢になって、しかも金銭的に恵まれているにも関わらず「引退しない男たち」という例もあります。彼らも引退した場合、他に趣味がない、自分に社会的な価値がないことを知っている。だから、引退したがらない。自民党では、この問題で苦労しているようです。企業でも、いつまでたっても顧問だとか、相談役という役職にしがみついている人が少なくありません。

 

帰属集団への依存という意味では、日本という国家に依存している人もいます。本当は、疎外されている。そこで、「でも俺は、日本人だから偉いんだ」と思うことにして、自分を慰めている。こういうメンタリティが、中国や韓国を馬鹿にし、ヘイトスピーチを行なったりするのではないでしょうか。

 

6.従属型

 

帰属集団の中で自らの序列を受け入れるということは、その集団の中で自分の居場所を確保することにもなります。そこで、自分よりも格上の人には従おうとするメンタリティが生まれる。それは楽だし、ひいては自分の出世にもつながる。そこで、ヒラメと呼ばれる上しか見ないような人が出て来る。下には厳しいが、上にはゴマを擦る。

 

今日の日本は、アメリカに従属している。アメリカから武器を買わされ、アメリカのカジノ業者がトランプの友達だそうで、日本はカジノを解禁しようとしている。戦後70年以上が経過したと言うのに、日米地位協定が改定される見込みは立っていない。アメリカよりも下だという日本人の序列意識を改変しない限り、日本の対米従属は終わらないのではないでしょうか。

 

7.嫉妬型

 

元来、“競争系”というのは論理に基づいていません。そこで、このメンタリティを強く持っている人というのは、概して、論理に弱い。そこで、論理的な主張を行う人に対し、嫉妬心を持ちやすい。そういう傾向が顕著に現れるのは、論理的な主張を行う野党系の女性議員に対してではないでしょうか。「女のくせに」というやっかみが透けて見えます。

 

自分よりも幸せそうに見える人や恵まれている人に嫉妬し、マウンティングを試みる。このような行為も、この“嫉妬型”だと思います。

 

上記の通り、“競争系”のメンタリティというのは、何かを怖れ、疎外され、依存し、従属し、嫉妬深いものだと思います。このメンタリティを克服するために、まずやるべきことは、“疎外”を解消することだと思います。貧富の格差を解消する。教育の機会を平等にする。人々を社会からドロップアウトさせない。そういう社会的な努力が、大切だと思います。

 

この章、終わり。