文化領域論

(No.196 ~ No.228)

沖縄について思う

12月14日、沖縄の辺野古に土砂が投入されました。ショッキングなニュースで、憤りを感じると共に、悲しく感じたのは、私だけではなかったものと思います。そこで今回は、少し沖縄について考えてみることにしました。まずは、歴史から。

 

かつて、沖縄本島とその周辺に住む人々は、中国、日本、朝鮮半島などと交易していました。そして、1429年、尚巴志(しょうはし)王という人が、国内の統一に成功し、琉球王国が誕生します。琉球王国は、中国へ朝貢(ちょうこう)を行っていたそうです。何らかの財物を貢ぎ物として、渡していたということでしょう。

 

ところが、1609年になりますと徳川家康の許可を得た薩摩藩が侵攻し、琉球王国は破れてしまいます。そして、琉球王国は、以後、薩摩藩の従属国となり、薩摩藩への貢納(こうのう)が義務付けられたのです。しかし、これに反発した琉球王国は中国(当時は”清”)への朝貢も継続し、独立国としての体面を保ったのでした。

 

1879年、日本国の明治政府は、武力的威圧を加えた上で、琉球王国に中国(清)との関係を断つよう迫り、琉球王国を日本の沖縄県としたのでした。そして、遂に琉球王国は滅亡してしまったのです。

 

時は流れて、第二次世界大戦も末期となり、大量の米英軍が沖縄に侵攻してきました。そして、沖縄戦と呼ばれるし烈な戦いが繰り広げられたのです。この戦いで死亡した沖縄県民は、122千人にのぼると言われています。そしてこの時、集団自決という悲劇が起こる。敵国の米兵に殺される位なら、いっそ自ら命を絶ってしまおう。そして、自決した人は千人を越えた。但し、この集団自決については、日本軍に強制されて自決したという説と、日本軍による強制はなかったという説があるようです。いずれにしても、絶望の中で尊い命が奪われたことに変わりはありません。

 

日本の敗戦後、沖縄は米国によって統治されましたが、1972年、日本政府が相当額の金銭を支払って、沖縄は再び日本国の沖縄県となったのです。

 

駆け足で見て来ましたが、こういう歴史を無視して、沖縄を語ることはできません。今日、沖縄でデモなどの政治活動に参加されているのは、ご老人の方々が多いようです。そして、若者たちは、態度を決め切れずに思い悩んでいる。

 

さて、米軍の基地問題ですが、メディアの報道も少し、混乱しているように思うのです。まず、普天間に飛行場がある。その周辺には民家だとか学校が密集していて、普天間は世界一危険な飛行場だと言われている。実際、つい最近もヘリコプターの部品が、校庭に落下するという事故が起こった。何としても、普天間の土地は米軍から返却してもらう必要がある。ここまでは、共通理解だと思います。では、辺野古に新たな基地を作れば、米軍は本当に普天間を返還してくれるのか、という問題があると思うのです。

 

この点、12月15日付けの毎日新聞から、引用させていただきます。

 

普天間飛行場の返還時期は22年度とされているが、代替施設建設が前提とされるため返還時期は見通せていない。」(1面)

 

「強硬姿勢の背景には、政府が2014年2月に県と約束した「5年以内の普天間飛行場の運用停止」の見通しが立たず、「約束違反」との反発が強まることへの懸念もある。」(3面)

 

つまり、今から辺野古新基地の建設に着手したとしても、普天間の返還時期がいつになるのか、見通せない状況にあるということなんですね。これに対し、沖縄県側は、次のように主張している。

 

「県は独自の試算として、大規模な地盤改良工事には5年かかり、移設完了は早くても13年以上先になると指摘。」(3面)

 

すなわち、辺野古に新基地を作ったとしても、普天間の返還には13年以上がかかる。そんなには待てない。辺野古の新基地は、普天間の解決策にはならない。そういう主張だと思います。

 

では、政府と沖縄県、どちらの主張が正しいのでしょうか。残念ながら、この問題について、日本国憲法は明確な答えを用意していません。しかし、耳を澄ませば、憲法の声が聞こえてくる。これは、沖縄県民の皆様が耐え忍んでいる苦難の大きさと、それでもなおかつ米軍の駐留を認めなければならない国家としてのニーズ、この二つのうち、どちらが大きいかということではないかと思います。

 

Googleマップという便利なアプリがあるので、周辺の地図を確認してみました。すると、共産主義の中国と、それを取り巻く自由主義国家の相克が見えてきます。まず、朝鮮半島。ここは、未だに38度線をへだてて、せめぎあっている。朝鮮半島有事ということを想定すれば、沖縄は米軍にとって、有力な前線基地となり得る。しかし、昨今の南北融和ムードからして、朝鮮半島有事のリスクは、相当低くなっている。

 

ベトナムも遠くはない。かつてのベトナム戦争の際には、沖縄から飛び立った米軍機が、北ベトナムに空襲を仕掛けたであろうことは、容易に想像がつきます。しかし、それはもう過去のことです。

 

そして、近くに台湾がある。中国が台湾に侵攻する可能性はあるでしょうか。その可能性は、ゼロではない。しかし、仮にそうなったとして、米軍は台湾を支援するでしょうか。それは、はなはだ疑問ですし、率直に言ってしまえば、日本には関係がない。

 

残るのは、尖閣諸島です。中国は、これを狙っている。私も、そう思います。しかし、仮に、普天間の基地がなくなったからと言って、日米は尖閣諸島を守り切れないということがあるでしょうか。仮にそうだとしても、私は、現在、沖縄の人々が負っていえる苦難の方が大きいと思うのです。

 

地方分権というのは、立憲主義に基づくものです。そして、主権在民は民主主義そのものです。よってこの問題は、沖縄県民の方々の意思を尊重すべきだ、と思います。

 

国連のPKO活動などに実績のある伊勢崎賢治先生が、言っていました。「中国が日本に攻めてくるなんてことはありえない。少なくとも、人間の住んでいる地域は。それは国連憲章に違反する。尖閣位は、取られるかも知れないけど。」

 

なるほど。中国だって、と言うと語弊があるかも知れませんが、中国は国連の常任理事国です。国連への寄付金の額も、最近、日本を抜いて2位になったはずです。それだけ国際社会に責任を負っている中国が、日本に戦争を仕掛けるとは考えられない。加えて、日本は中国にとって、重要な輸出先国でもあります。

 

辺野古への土砂投入は中止し、普天間の返還を米国に求める。移転先は、米国が考えるべきことではありませんか。難しい交渉になるであろうことは、私にも理解できます。しかし、そういう交渉をきちっとやるのが、政治家の責任ではないでしょうか。