文化認識論

(世界を記述する。Since Oct. 2019)

政党の立ち位置(その12) NHKから国民を守る党

反緊縮財政を掲げる左派からの運動というものも、登場していたようです。山本太郎氏の師匠のような人で、経済学者の松尾匡氏が「薔薇マークキャンペーン運動」というのを展開しておられる。概略を紹介致します。松尾氏が提言している反緊縮財政等に関わる政策があって、これに合致する経済政策を主張している政治家、候補者には薔薇マークを認定する、というものです。これは、政党とは無関係で、認定する政策も経済分野に限定するというものです。今年になってからスタートした活動ですが、何やら新しい匂いがします。

 

新しいと言えば、「NHKから国民を守る党」(以下「守る党」)の活動も、とても新しい。こちらは、20年程NHKに勤務されていた立花孝志氏が、NHKの不正を内部告発し、その後NHKを退職し、立ち上げた政党のようです。先の地方選挙で26名の当選者を出し、注目を集めています。次の参院選でも、10名の候補者を擁立する予定です。(比例2名 選挙区8名)

 

守る党の基本的な政策は、「NHKをぶっ壊す!」ということにつきる訳ですが、具体的にはNHKの悪質な集金から国民を守る、NHKには見たい人だけが受信料を支払う、という2点に集約されるようです。どうも、面白い所に着眼点がある。ワンセグ携帯やテレビを視聴できるカーナビなども普及し始めた昨今、NHKはそれらの媒体を持っている人たちからも、視聴料を徴収している。

 

そもそも最近のNHKの放送内容というのは、安部政権に媚びへつらっている。更に、直近ではNHKの役員人事に安部官邸が介入したのではないか、との疑惑があって、立憲民主党の杉尾議員が国会で追及していました。

 

そもそも、私などはほとんど地上波のテレビを見ない。別にNHKを見なくとも、他にメディアは沢山ある。ただでさえ、消費税で苦しめられているのに、その上、高額な視聴料は払いたくない。そう思っている国民は、8割を超えるのではないでしょうか。これは、いい政党ができた。みんなで応援しましょう。

 

ただ、何となく感じるこの新しい匂いの正体は何か、この点を考えてみたいと思います。

 

旧来のパターンですと、まず政党がある。そして、政党は政策のパッケージを作り、有権者に呼び掛ける。有権者の側は、中間集団が母体となって支援活動を行う。政党、政策、中間集団の順で記載してみます。

 

自民党・・・既得権を保護する政策・・・農協、経団連など

民主党・・・労働者を保護する政策・・・労働組合(連合)

 

これが、前述の「薔薇マークキャンペーン」になりますと、そもそも政党という概念が消えます。推薦されるのは個人で、政策もパッケージではなく経済政策に限定し、更に訴えかける相手も個人ということになります。これを上の例にならって、記載してみましょう。

 

個人・・・経済政策のみ・・・個人

 

「守る党」の方はどうでしょうか。

 

守る党・・・シングルイシュー・・・個人

 

上記の検討から言えることは、2つあると思います。1つには、確実に中間集団の力が弱まっている。2つには、それに反比例して、個人の力が強まっている。これが時代の趨勢だろうと思います。そもそも、農協、医師会、労組などの中間集団が、その構成員に投票先を呼び掛けるというのは、もう古い。そんなのは個人の自由で、余計なお世話だ。そういう流れになってきた。その最大の理由は、ネットの普及だと思います。守る党の立花氏などは、ほとんど毎日、YouTubeに動画をアップされています。これにもいくつか意味があって、不特定多数の個人に呼び掛けるということの他に、NHKなどの不正を直接証明するという効果もある。何しろ、電話の音声など、直接的な証拠を白日の下にさらすことができる。これには、説得力があります。

 

今、ネットによって個人が覚醒している。

 

そもそも、政党自体が中間集団だという事情もあります。これは、時流に合っていません。政党のあり方自体が問われる時代になった。象徴的な言葉にダイレクト・デモクラシーというのがある。政党を介すのではなく、個々の論点に対して、有権者が直接判断を下す。そういう意味なのだろうと思います。

 

このブログでは、個人 ー 中間集団 ー 国家 ー グローバルという4つの階層を「集団スケール」と呼んでいますが、そこから、中間集団とグローバルが否定されつつある。それが時代の流れだと思います。そして残るのは、個人と国家になりますが、これは憲法が想定していたものです。このように考えますと、決して憲法は古くない。むしろ、時代の最先端を予言していたのではないか、とさえ思えて来るのです。

 

続く