文化認識論

(世界を記述する。Since Oct. 2019)

日米貿易協定 2段階方式の仕組み

日米貿易協定の国会審議等を巡り、ツイッター上で様々な論議が展開されています。私自身、大変不安を感じておりますので、少し、概略を調べてみました。取り急ぎ、その結果を報告致します。

 

まずご理解いただきたいのは、日米貿易協定というのは、かなり大きな話なので、1つの契約書にサインをしておしまい、ということではなく、段階を追っていくつかの書類にサインがなされるということです。まず、日米共同声明につきましては、ハーバー・ビジネス・オンラインに掲載されていました。

 

日米共同声明(ハーバー・ビジネス・オンライン)
https://www.cas.go.jp/jp/tpp/ffr/pdf/190925_TPP_statement.pdf

 

・2019年9月25日 日米共同声明
 署名者: 安部総理、トランプ大統領
 目 的: 日米貿易協定と日米デジタル貿易協定の締結。両国内の承認手続の実施。
      その後、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、
      その他の課題について交渉を開始する意図を確認する。

 

次に、2つの貿易協定については、外務省のホームページに掲載されていました。

 

外務省 HP
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page23_002886_00001.html

 

・2019年10月7日 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(“日米貿易協定”)
 署名者: 杉山駐米大使 ライト・ハイザー通商代表
 目 的: 日米間における物品貿易の促進。市場アクセスの改善。
 品 目: 牛肉、豚肉、ヨーグルト、チーズ、オレンジなど。(日本が譲歩)
 効 力: 両国において、国内法上の手続を完了した後に効力発生。(9条)

 

・2019年10月7日 日米デジタル貿易協定
 署名者: 杉山駐米大使 ライト・ハイザー通商代表
 目 的: デジタル貿易の促進
 効 力: 両国において、国内法上の手続を完了した後に効力発生。(22条)

 

そして、本件に関する今後の日本の国会審議予定は、次の通りとなっています。

 

2019年11月15日: 衆議院外務委員会で採決
2019年11月19日: 衆議院本会議で採決

 

ポイントをまとめてみましょう。まず、日米共同声明に署名がなされた訳ですが、この中で両国は、今後2段階に分けて貿易に関する協議を進めていくことが確認されています。第1段階は、物品貿易とデジタル貿易が対象で、日本側は主に農産品(特に牛肉、豚肉)に関して譲歩することになります。第2段階は、「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題」が検討の対象となる訳で、これは広範なFTA(Free Trade Agreement)となるはずです。

 

現在国会で審議されているのは、第1段階ということです。憲法61条に、条約の締結に関する国会承認については衆議院の議決が優先する旨、定められていますので、実質、今月の19日に衆議院本会議で可決されれば、第1段階については、最終的に発効することになります。(厳密に言えば、アメリカ側の国内手続も必要となります。)現在、国会前で農業関係団体の方々が座り込み等の抗議活動を行っておられます。

 

上記の第1段階の日米貿易協定につきましては、大別しますと、3つの問題があります。まず、米国産の牛肉、豚肉が安全なのか、という問題です。牛肉につきましては、過去にBSEの問題もありました。私としては、どうも不安で仕方がありません。できれば、和牛を食べたいと思っています。2番目の問題としては、食料安全保障上の問題です。アメリカに対する依存度が高まれば、今後一層、日本はアメリカに従属せざるを得ない状況に追い込まれます。3番目としては、日本の畜産業が損害を被るということです。結局、日本は自動車や自動車部品について、高い関税を掛けるぞ、とアメリカから脅されている。そこで政府は、自動車を守って畜産業を売った、という構図にあるのではないか。但し、自動車や自動車部品について高い関税を掛けることはしない、という確約をアメリカから得ている訳ではない。

 

なお、日米デジタル貿易協定につきましては、世界中で確固たるルールが決まっていない現時点において、アメリカとしてはポチである日本と協定を締結することによって、今後の世界的なルール作りにおける主導権を確保したい、という思惑があったようです。この協定ですが、利益を得るのはGAFAGoogle, Amazon, Facebook, Apple)ということになりそうです。

 

なお、国会における審議日程について、合意したのは、自民、立憲、国民の3党です。立憲と国民は野党でありながら、体を張ってまで日本の畜産業を守ろうという気概はないように思います。やはり、対米従属左翼ということです。

 

それにしても、「桜を見る会」にばかり注目が集まる中、こうして日本の畜産業が売られて行く。残念でなりません。しかし、更に深刻な問題は、第2段階にあります。最悪、日本の国民皆保険制度が、破壊される怖れがある。そうなると、例えば盲腸の手術をするだけで、700万円必要になると言われている。それが嫌なら、個人で保険に入れということですが、その保険料は月額5万円程度になる。3人家族なら、月額15万円。とても払える額ではない。いずれにせよ、今後、国民による監視が必要だと思います。日本にも政治の季節がやって来る。そんな予感がします。