文化認識論

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日米貿易協定 恐怖の第2段階(日米FTA)

前回の原稿では、日米貿易協定の第1段階について考えてみました。こちらは、既に11月15日の衆議院外務委員会にて可決されました。反対の意見表明を行った共産党の穀田議員の発言を聞きますと、私が前回の原稿に記したこととほぼ同じ内容で、少しびっくりしました。

 

共産党 穀田恵二議員 食の安全を脅かし経済主権を破壊 2019.11.15
https://www.youtube.com/watch?v=rU6gwmAp9_g

 

この第1段階は、11月19日に日本の衆議院本会議で採決されると、実質的には、効力が発生することになります。

 

今回は、今後、日米貿易協定がどのように進展するであろうか、推測してみたいと思います。前回の原稿に記しましたように、2019年9月25日に発表された日米共同声明には、「その後、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題について交渉を開始する意図を確認する」と明記されています。これが第2段階ということになります。

 

“れいわ新選組山本太郎さんの説明によれば、日米貿易協定の審議項目は、全部で22項目に及ぶとアメリカ側が発表している。第1段階は2項目だったので、残る20項目がこれから審議されることになります。

 

山本太郎(れいわ新選組代表)おしゃべり会山形市2019年11月14日
(該当箇所は、1時間24分頃から始まります。)
https://www.youtube.com/watch?v=Ikvnw1E6I6U

 

この残る20項目の中に、日本の国民健康保険に関する事項が含まれているか否か、という問題があります。かつて、政府は含まれていないと説明していたようですが、こちらもアメリカ側の公表資料によって、審議事項に含まれていることが、共産党の田村智子議員の国会における質疑によって判明しています。やはり、これは大変だ、盲腸の手術で700万円も掛かってしまう!

 

私が何故、盲腸の手術をそんなに心配しているかと言うと、その根拠となる動画があるのです。22分とちょっと長めですが、是非、ご覧いただきたい。ちなみに、この動画ではTPPと言われていますが、この動画が撮影された時点では、アメリカが参加する前提でTPP交渉が行われていた訳です。その後、アメリカは交渉から離脱し、日本は他の10か国とTPPを締結した。集団で交渉するよりも、1対1で交渉した方が有利になると考えたアメリカは、その後、日本に対して日米貿易交渉を働き掛けてきた、ということです。

 

TPPより日米FTAは数段ヤバイ(動画) 22分
https://www.youtube.com/watch?v=SCtL08EfFlU&feature=youtu.be

 

仮に、月額5万円の保険に加入していたとしても、保険の適用率が7割だとすると、3割が自己負担となる。よって、700万円の3割、210万円の実費負担が必要となる。しかし考えてみますと、問題は盲腸だけではない。風邪薬だって、高騰する。例えば、1週間分で5万円とか・・・。歯医者だって、上がる。産婦人科だって、上がる。高齢者に対する介護だって、上がる。こうなりますと、日本の国民健康保険は、収入に対する支出が急騰する訳で、結局、破綻することになります。これでは、過半の日本国民が生きていけない!

 

しかし、本当にそんなことが起こり得るでしょうか? 私自身、疑問がない訳ではありません。仮に日本の国民健康保険制度が崩壊した場合、第一に病院へ行く患者の数が激減する。薬の売り上げだって低下する。すると、病院の経営が困難となる。日本の製薬会社だって、売り上げが落ちるに決まっています。日本医師会や製薬会社は、今日まで、自民党を支えて来たはずです。自民党が、その支持団体に対して、切り捨てるようなことをするか、という問題があります。

 

しかし考えてみますと、今日まで、既に自民党はその支持団体や支援者たちを切り捨てて来たのではないか。種子法の廃止と今回の日米貿易協定(第1段階)で、農業、畜産業の人々が切り捨てられた。永年、自民党を支持してきた郵政の人たちも、民営化によって被害を被った。(郵便局では、民営化に伴ってノルマが厳しくなったそうです。それが、今般の簡保やゆうちょ銀行の不正につながったと言われています。)

 

アベノミクスによる最大の被害者は、もしかすると銀行なのかも知れません。安部政権は、大量の国債を発行し、銀行に買わせた。それを買いオペによって、日銀が買い取る。結果、市中の銀行には大量の資金が流入し、金利が低下した。銀行は、膨大な資金を持たされたにも関わらず、不景気なので融資先がない。日銀に預けている資金は、マイナス金利になるので、置いておくと目減りする。これで、銀行の経営が成り立つはずがありません。勢い、銀行は合併を繰り返す。合併というのは、要は、体のいいリストラです。銀行業界は全銀協という業界団体を作っている。当然、自民党にも献金を繰り返して来たのではないか。

 

やはり、安部総理率いる自民党政権というのは、その支持者や支持団体であっても、バッサリと切り捨てる可能性がある。すると、日本医師会や製薬会社だって、切られる可能性はある訳で、結論としては、日本の医療制度が破壊される可能性は、十分にあると言わざるを得ない。実際、最初に犠牲にされたのは、アメリカの国民だった。続いて、(多分)カナダやメキシコが犠牲となり、魔の手は韓国に及んだ。搾れるだけ搾りつくした彼らは、次のターゲットとして、日本を狙っている。

 

ところで、今後締結される可能性のある日米FTAには、ISDS条項、為替条項、ラチェット条項などが含まれる可能性があると指摘されています。順に見ていきましょう。

 

〇 ISDS(Investor State Dispute Settlement)条項/投資家対国家の紛争解決制度
これは、先に紹介しました動画の中でも、説明されています。具体的には、日本に投資をしたアメリカの企業が、日本政府や日本の政府系機関を訴えることができる、という制度です。一度、訴えを提起されたら、日本側に勝ち目はありません。アメリカ系の機関(国債投資紛争解決センター)において、アメリカのルールに従い、裁定が下される。例えば、日本政府が国内の産業を守ろうとして、何らかの支援策を講じようとする。すると、このISDS条項に従って、日本政府が訴えられる。従って、今後、ISDS条項を含む日米FTAが締結された場合、日本の産業は政府の援助を受けにくくなる。

 

〇 為替条項
米ドルと円の関係で、円安になると日本はアメリカに輸出しやすくなります。そこで、安倍政権は大量に国債を発行して、円をジャブジャブの状態にした。実際、これで為替は円安に動き、日本の輸出企業は潤って来た訳です。しかし、アメリカ政府にしてみると、これが面白くない。日本は為替を操作している悪い国だ、という意見が出てくる。そのため、今後、アメリカがFTAに乗じて、この「為替条項」を主張してくる可能性がある。この条項に合意すると、日本は為替に影響するような政策を、独自に決定することができなくなります。すなわち、日本は独自の判断で、国債すらも発行できなくなる可能性がある訳です。これは、日本という国家が経済に関する主権を失うことを意味している。例えば、国債を発行し、災害に備えて国土を強靭化しようと考えている学者がいますが、そういうことはできなくなります。MMT(Modern Monetary Theory/現代貨幣理論)に基づく政策や、“れいわ新選組”の掲げている政策も、実現困難となります。

 

〇 ラチェット条項
ラチェットというのは、ネジを締める工具のことです。例えば、六角形の頭をしたボルトがある。すると、箱型で、同じく六角形の形をしたラチェットという工具を、上からカポッと被せるんです。そして、ラチェットを左に回すとネジが閉まる。右に回すと、ラチェットは空回りする。従って、ラチェットを左右に動かし続けると、一方的にボルトは締まって行く。そういう工具なんです。これになぞらえたFTAにおけるラチェット条項というのは、一度緩和した規制は、決して強化されることなく、ただひたすら、緩和の方向に動くことのみが許される。そういう条項を意味しています。何だか、締まっていくのはボルトではなく、私たちの首のような気がしますけど・・・。

 

私たち日本人は、今、大変な危機に直面しています。しかし、政府は説明をしたがらない。むしろ、隠そうとしている。メディアも報道しない。私たちは、どうすれば良いのでしょうか。来年11月に予定されているアメリカの大統領選挙で、仮にトランプが落選し、民主党系の候補が当選すれば、日米FTAは回避されるかも知れません。そこまで時間的な余裕があるのか、それは私にも分かりませんが。一方、日本国内の情勢を考えた場合、勝負は、次の衆院選ではないでしょうか。ここで現政権が勝利するようであれば、日米FTAの危険性は、各段に高まります。

 

とりあえず、私は、次の事項を提案させていただきます。

 

1. 日米FTAに関して、正しい知識を習得すること。
2. 日米FTAに関して、日本の各政党の態度を見極めること。
3. できる範囲で、日米FTAに関する情報を拡散すること。
4. 最後まで、あきらめないこと。