文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

日米FTA 日本の民主主義が消える

当初の予定通り11月19日、日米貿易協定(牛肉、豚肉)と日米デジタル貿易協定が、衆議院本会議で可決されてしまいました。これはもう、参議院で否決をしようが、採決を拒否しようが、憲法60条、61条に基づく30日ルールによって、12月19日頃には日本の国内手続が完了し、来年の1月1日に発効します。

 

米国の議会向け説明文書
(1) 物品貿易・・・第1段階
(2) 衛生植物検疫(SPS)
(3) 税関、貿易円滑化、原産地規則
(4) 貿易の技術的障害(TBT)
(5) 良い規制の慣行
(6) 透明性、広告、管理
(7) サービス貿易(電子通信及び金融サービス含む)
(8) デジタルの物品貿易及びサービス越境データ移転・・・第1段階
(9) 投資
(10) 知的財産権
(11) 医薬品及び医療機器における手続の公正
(12) 国有企業及び政府管理企業
(13) 競争政策
(14) 労働
(15) 環境
(16) 反腐敗
(17) 貿易救済
(18) 政府調達
(19) 中小企業紛争解決
(20) 紛争解決
(21) 一般規定
(22) 為替

 

11月19日の衆議院で可決した項目は、上に記した一覧のうち、(1)と(8)ということになります。私の先の原稿に記しました、ISDS条項は上の図の(20)で、また、為替条項は(22)ですので、まだ、これらの恐ろしい条項を日本が受け入れた訳ではありません。

 

但し、今後、残る20項目に関する協議については、既に日米共同宣言(安部総理が署名)に謳われていますので、確実に開始されます。そして、その時期は来春以降であると言われています。この点、添付の長周新聞の記事をご参照ください。

 

長周新聞 主権蹂躙も甚だしい日米FTA 国会承認を急ぐ
政府が明らかにしない協定の内実
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/14303

 

どうやら今回の日米貿易協定(第1段階)については、トランプの次期、大統領選に利用されたという意味合いが強いようです。アメリカの大統領選は、来年の11月ですが、選挙戦は、そのはるか前の段階で始まります。トランプとしては、至急、成果が欲しい。そこで、第1段階の日米貿易協定の締結を急ぐ必要があった。

 

一方、日本側はと言うと、まずアメリカから、日本製の自動車とその部品の輸入に対して25%の関税をかけるぞ、と脅された。そこで、経産省役人の天下り先である自動車産業を守るために、農業を差し出したということのようです。また、今回の第一段階の交渉では、日本のコメは守られた。アメリカでコメの生産が盛んなのはカリフォルニア州だ。そして、同州では民主党が強い。トランプとしては、どうせ選挙で勝つ見込みのないカリフォルニア州に配慮をする必要がなかった。しかし、既に関係団体からクレームが出ており、今後の第2段階の交渉において、トランプは日本のコメに関する市場開放を強く求めてくるだろう、と言われています。今後、日本のコメまでアメリカに売られる可能性が高いということです。

 

問題は、先に述べました日本の国民皆保険制度が破壊され、農業が売られることばかりではないようです。今後、私たち日本人は、アメリカで作られた農薬まみれ、遺伝子組み換え、ゲノム編集が行われた食料を食べさせられることになりそうです。詳細は、同じく長周新聞さんの以下の記事をご参照ください。この記事を読みますと、絶望的な気分になること請け合いですが、これが私たちの直面する現実なのだろうと思います。

 

長周新聞 食の安全を放棄する日米FTA 東京大学教授 鈴木宣弘
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/13592

 

更に、私が懸念しているのは、来年以降の主要日程です。

 

2020年春 ・・・・ FTA第2段階交渉開始
2020年夏 ・・・・ 東京オリンピック
2020年11月 ・・・ アメリカ大統領選挙
2021年9月 ・・・ 安部総理 任期満了

 

すなわち、馬鹿な国民がオリンピックに熱狂している間に、その裏で、日米FTAに関する交渉が、着々と進行するのではないか。桜を見る会や沢口エリカの逮捕がスピン報道(権力者が国民の関心をそらすための報道)ではないかという論議がありますが、東京オリンピックこそが最大のスピン報道になるのではないか。

 

そして、次の衆議院選挙がいつになるかという問題ですが、仮に安部総理が当分衆議院を解散せず、日米FTAの第2段階に合意してしまえば、次の政権でこれをひっくり返すことは至難の業となります。

 

日本における規範の優先順位は、次の通りです。

 

1. 憲法
2. 条約 ・・・ 日米FTA
3. 法律

 

すなわち、日米FTAは日本の法律よりも、上位に位置することになります。従って、日米FTAがフルパッケージで締結された場合、それにそぐわない日本の法律は、改正しなければなりません。既に、韓国ではそのような法律改正がなされているようです。しかし、元来、法律というのは、主権者である国民が国会議員を選出し、その国会で決めるべきものではないでしょうか。それが、民主主義の根幹ではないでしょうか。仮に、日米FTAがフルパッケージで締結された場合、日本の民主主義が消滅してしまうのではないか。