文化認識論

(世界を記述する。Since Oct. 2019)

日米FTAは終わる。私たちが望めば

この原稿のタイトルって、ジョン・レノンの“War is over, if you want it”のパクリではないかと思った人、その通りです。

 

FTA is over, if we want it!

 

しかし、これは単なる私の個人的な願望ではありません。日米貿易協定の原文、第10条にそう書いてあるのです。同条文によれば、いつでも、いずれかの締約国が相手国に書面により通知をした場合、その4ヵ月後に協定は終了する。そう書いてある。

 

・2019年10月7日 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(“日米貿易協定”)
 署名者: 杉山駐米大使 ライト・ハイザー通商代表
 目 的: 日米間における物品貿易の促進。市場アクセスの改善。
 品 目: 牛肉、豚肉、ヨーグルト、チーズ、オレンジなど。(日本が譲歩)
 効 力: 両国において、国内法上の手続を完了した後に効力発生。(9条)
 終 了: 書面による通知後、4ヵ月。(第10条)

 

嘘だと思う人は、是非、外務省のHPを確認していただきたい。

 

外務省 HP
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page23_002886_00001.html

 

本件は、今後、参議院で審議されることになりますが、野党はどうせ戦わない。若しくは、戦っているフリをするだけだろうと思います。ましてや、憲法に基づき、衆議院で可決した結果を参議院でひっくり返すことはできません。衆議院以上に、ヤル気のない審議が続くのだろうと予測します。しかし、私たちに希望は残されている。それは、アメリカと対等に交渉のできる強い政府を作ることです。そして、第一段階を含め、日米FTAを終わらせればいいのです。法的には、いつでも通告をすることによって、4ヵ月後に終わらせることができるのですから!

 

ところで、先の原稿でグローバリズム勢力の分析を行いましたが、では、反グローバリズムとは何か、考えてみる必要があります。世間では、反グローバリズムという言葉が一般に用いられており、私もその例にならってきました。しかし、この言葉は“グローバリズムには反対だ”という意味がありますが、では、何がいいと思っているのか、そのことを示してはいません。

 

私は、反グローバリズムとは、国家を枠組みとして考える、ということだと思います。これを何と言うか。単純に“国家主義”と呼びたいところですが、コトバンクWikipediaを見ますと、“国家主義”にはロクな意味が載っていない。個人の利益よりも国の利益を優先するのが国家主義だ、と書いてある。これでは、私の考えていることとは正反対です。そこで、私の造語で学術用語ではありませんが、「主権国家主義」ということにしたいと思います。

 

主権国家主義」という言葉に込める私の思いは、独立した国家として、他国や他国の政治、経済勢力に支配されることなく主権を行使し、三権分立や民主主義に従って、国家を運営すべきだ、という主張ということです。これが、反グローバリズムの本質だと思います。

 

ところで国家とは何か。これはもう昔から沢山の人々が考え続けて来た大変な問題ですが、ここではざっくりとその概要を見て行きましょう。思うに、国家に関する代表的な考え方には、次のものがあります。

 

1. 君主制
2. 軍国主義
3. 共産主義
4. 立憲主義
5. 民主主義
6. MMT

 

君主制・・・王様やお殿様が国を統治する。日本の明治憲法では、天皇陛下が国を治めていたので、このパターンだったと言えます。

 

軍国主義・・・軍事力によって、国を治めようという考え方。現在の北朝鮮などは、これですね。また、敗戦までの日本も同じでした。戦争ばかりやっていた“50年戦争”と呼ばれる時期があった訳です。国家と言うと、このイメージが強い。国家というのは、悪いものだ。従って、国家は弱い方がいいと考える人は少なくありません。かつて、私もそう思っていました。

 

共産主義・・・土地の私有財産制を認めない。土地は国家が所有する。その他、私有財産制に制限を設ける。国家が私人の財産制度に介入するという意味で、共産主義主権国家主義の一種類だと言えます。かつて共産主義者の中には、世界革命を主張する人がいました。全世界を共産主義にしようという主張です。これは究極のグローバリズムだと言えますが、今どき、そんなことを考えている共産主義者は少ないと思います。

 

立憲主義・・・立憲主義のポイントは、3つあります。第1に、憲法によって国を作ろうということ。第2に、人権を守ろうということ。第3に、人権を守るために、権力は分立させようということ。これが三権分立につながります。このように、立憲主義というのは、主権国家主義の中核をなす考え方なのです。従って、党名に“立憲”の2文字を掲げながら、自由主義貿易体制(グローバリズム)を推進しようという立憲民主党は、「看板に偽り有り!」だと思う訳です。

 

民主主義・・・主権在民国民主権。これが民主主義で、これは君主制と真っ向から対立します。立憲主義の場合は、明治時代の日本など立憲君主制の国家があり、必ずしも君主制と対立しない。ところが、民主主義は君主制と対立する。従って、立憲主義と民主主義は、イコールではない訳です。例えるならば、国のシステムを規定する立憲主義がコップで、民主主義はコップに支えられた水、すなわち内実だと言えます。どちらか一方が欠けても、主権国家主義の目的を果たすことができません。だから、本当は立憲民主党という党名は、大変素晴らしいのです。かえすがえすも、残念でなりません。また、現在の日本のように、権力側が教育とメディアを握ってしまうと、必然的に国民は愚民化する。愚民は、権力に盲従する。よって、現在の日本においては、民主主義が危機的な状況にある。民主主義は既に終わった、と言う人も出てきた。しかし、それでも民主主義しかない。今般、中国政府によって弾圧を受けて来た香港で、自由を求める人々が選挙で圧勝した。正に、民主主義の勝利だと思います。

 

MMT(現代貨幣理論)・・・自国通貨を発行できる政府が、いくら負債を増やしたとしても、破綻することはない。従って政府は、インフレ率に応じて、供給サイドの企業、需要サイドの消費者が保有する通貨の量(マネーストック)を調整することができる。MMTについては私も勉強中で、偉そうなことは言えませんが、概ね、こういうことだと思います。MMTは現象に関する理論であって、主義、主張ではない、とも言われますが、そこから導かれる経済政策は、国家を単位として考えている訳です。従って、これは国家をベースとした理論であって、グローバリズムと対立する訳です。MMTというのは、国家による統制経済を目指しており、実はこれ、共産党と相性がいい。MMTによって、近年、急激な経済成長を遂げたのは中国だ、とも言われています。日本共産党の方々には、是非、MMTを勉強していただきたいと思う次第です。

 

では、グローバリズムに反対し、主権国家主義を目指す政党、政治勢力について見ていきましょう。

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 右派

 

上記のような勢力としては、自民党石破茂氏と同氏が率いる派閥、水月会を挙げることができます。石破氏は自らのブログに「あらゆる体制を整備し、真の独立主権国家へ」と記載しており、明らかに反グローバリズムの側に立っています。自民党の中にもかつては経世会と呼ばれる対米自立派のグループが存在したのですが、今、自民党の中で対米自立を主張するのは、ほとんど石破派位しか残っていないのでは。石破派は、安倍総理から干されている訳ですが、最近の世論調査では、次期総理にしたい人ランキングで石破氏が1位になりました。

 

石破氏は、自民党の中で憲法について語ることのできる、数少ない人材でもあり、論理的な思考のできる人だと思います。安倍総理やセクシー進次郎とは、訳が違います。但し、経済政策については、消費税増税を主張してきた経緯があり、そんなことで国民生活が豊かになるはずがありません。

 

主権国家主義 - 緊縮財政 - 左派

 

このパターンは、「緊縮左派」と言っても良い勢力だと思います。代表例は、かつての社会党、現在の共産党だと思います。特に共産党は、一貫して対米自立を主張してきた数少ない日本の政党だと思います。日本は、敗戦という悲惨な経験をした。そこで、やはり平和がいい、憲法9条を守って行こうという気運が高まった。そこで、護憲派と呼ばれる勢力が台頭する。しかし護憲派は、憲法9条のみならず、それとセットになっている財政法のトリックを見破ることができなかった。すなわち、日本は自律的に国債を発行して、国民経済におけるマネーストックの量を調節するという自由を奪われていたことに、彼らは気付かなかった。もしかすると、未だに気づいていないのかも知れません。それでも、戦後、朝鮮戦争による特需、それに続く高度成長期、バブルと日本ではインフレが続きました。これらの段階で、問題は生じなかったのです。問題は、今から20年ちょっと前にデフレが始まった訳で、以後、大量に国債を発行する必要が生じた訳です。それでも、緊縮左派の勢力は、与党と一緒になって、緊縮財政を進めて来たのです。この罪は重い。

 

緊縮左派の新聞としては、朝日、毎日などがあります。彼らは、未だに子や孫の代まで借金を残してはいけない、という寝ぼけたことを書いています。ちなみに、朝日、毎日の幹部は、読売、サンケイなどと同様、最近、安倍総理と夕食を共にしており、ヒンシュクを買っています。

 

緊縮左派というのは、一見、正しそうに見える。かつて、日本の多くの知識人がこの立場に立っていたのではないかと思います。現在も経済学者の金子勝氏、元経産省官僚の古賀茂明氏、市民連合を立ち上げた政治学者の山口二郎氏などが、この立場を取っていると思われます。

 

蛇足かも知れませんが、現在の共産党のポジションについて、ちょっと述べておきましょう。昨今、新聞赤旗の購読者数は減少傾向にあります。党員数も減っています。しかし、共産党にとって最大の課題は、党員の高齢化ではないでしょうか。あと、10年もすると党員が激減する可能性がある。そのような状況下にあって、小沢一郎氏が立憲と国民の合併を仕掛けている。もし、合併によって一大勢力が誕生する場合、共産党としてもその波に乗り遅れてはならない。そこで、共産党は他の野党に対し「野党連合政権協議」を持ち掛けた。簡単に言うと、政権交代が起きた場合、共産党からも大臣を出したい、という意味です。当然、立憲や国民は難色を示している。何しろ彼らは、支持母体である連合から「共産党とだけは、絶対に組まないでくれ」と言われているのです。そして、共産党からの呼び掛けに最初に応じたのが、“れいわ新選組”だった。両党は、「当面、消費税5%への減税を行い、その後、消費税廃止を目指す」ということで、概ね、合意したのです。(共産党としては、消費税における非課税品目を増やすなど、別の方策も検討したいと言っていました。)これらの事項から考えられるのは、共産党としては、2つの方向を目指しているということです。第1には、「野党連合政権協議」を結実させ、政権交代が起きた場合には政権の中に入る。第2には、この選択肢が消滅した場合には、勢いのある“れいわ新選組”と共闘する。

 

共産党は、日米FTAについては、そのHPで明確に批判しています。確か、新聞赤旗においても、反対の意見表明があったように思います。しかし、国会での動きなどを見ておりますと、今一つ、力が入っていない。むしろ、他の野党と一緒にサクラ問題の追及に力を入れている。これは上記のように、現在、共産党が両にらみの状況にあるからではないか。(これは、私の推測です。)

 

今回も、書き切れませんでした。このシリーズ、もう一本、原稿をアップします。